大規模地震のあとに豪雨が襲ったら……デジタル技術で被害規模予測 防災ニュース

2021年8月2日

8月1日 デジタル技術の進展が、災害対策のあり方も変え始めています。災害予測の先鋒となっているのが「デジタルツイン」などのシミュレーション技術です。デジタルツインは、日本の国土をデジタル空間に再現するもので、災害が発生した場合の被害の規模をシミュレーションします。「双子」のように現実とそっくりの街並みをつくり、実際の交通量や人の流れのデータを反映させた上で、地震の揺れや津波、豪雨による浸水などの情報を重ねていきます。

より実際的なデータをもとにしたシミュレーションにより、事前の防災対策も効果的に進めることができます。また、災害発生直後の予測も大きく変わります。現場から被害状況を集約する時間を待たずに、どこでどのくらいの被災者が発生しそうだから救援・応援を優先的に派遣しようといった、緊急・応急対策を、よりすばやく的確に計画できるようになるのです。

デジタルツイン技術のひとつが、内閣府の「国家レジリエンス(防災・減災)の強化」の取り組みとして進められている「避難・緊急支援統合システム(CPS4D: Cyber-Physical Synthesis for Disaster Resilience)」です。システムは2022年度に完成する予定とされています。CPS4Dにより、台風発生時の降水量から浸水想定地域を予測し、自治体職員1人あたりの被災者数を算出すれば、どこへ優先して応援部隊を派遣すればよいかがわかります。そのほかにも、避難所の密度のシミュレーションと感染拡大のシミュレーションを合わせることで、避難所開設の計画に役立てることもできます。

世界一の計算速度を誇る「富岳」を活用した防災のシミュレーションも進められています。内閣府では、相模トラフ沿いの巨大地震が発生した場合に想定される長周期地震動が超高層ビルの揺れにどのような影響を与えるかをシミュレーションしています。結果は2021年度中には公表される予定で、首都圏の超高層建築物などに対する建築基準法の規制強化や、高層階に住む人達の防災対策の強化に活用していきます。

気象庁では、豪雨や台風に対する防災力を高めるための技術開発を進め、予報の高度化に取り組んでいます。その他にも、複数の学術・研究機関が参加し、デジタルツイン技術と富岳のシミュレーションをかけあわせ、南海トラフ地震の発生で地盤や地形が変化したところへ豪雨災害が襲った場合の「複合災害」でどのような被害が発生するのかを予測する研究も進められています。

南海トラフ地震をはじめとする巨大地震の発生や、地球温暖化による気象災害の大規模化など、災害のリスクは年々高まっています。こうしたデジタル技術による予測結果をしっかり活用して、どのような状況が想定されるのかを的確に踏まえた予防対策と、いざというときの状況把握や判断をすばやくできる応急対策を整えておきましょう。

 

防災ログ事務局:南部優子


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