帰宅困難時の「群衆雪崩」に注意を 防災ニュース

11月29日 内閣府が設置した首都直下地震帰宅対策等検討委員会にて、「帰宅困難者等対策に関する今後の対応方針」が公表されています。原則として、これまでの「発災から3日間はむやみに移動を開始しない一斉帰宅抑制」を行う基本方針が維持されます。さらに、近年のICTの進展や公共交通機関の復旧対応状況などを踏まえ、柔軟に対応方針を検討するとしています。

今後、地震の規模など災害の状況や、交通機関の耐震化・復旧対応の状況など、帰宅困難者をめぐる社会状況の変化を踏まえ、災害の状況に応じて効果的な対応ができるよう、以下のポイントを軸に、ガイドラインの改定などを進めるとしています。
・対策の実効性口上を図るための、一斉帰宅抑制等の正しい理解と認知度の向上
・デジタル技術の活用等による帰宅困難者の一斉帰宅抑制等の適切な行動の促進
・一斉帰宅抑制の適用期間中に一部鉄道が運行する場合の鉄道帰宅者への支援

帰宅困難者問題は、首都圏など人口が集中するところで深刻化します。外出時に地震と遭遇すると、通信規制で連絡がつかない状況の中、家族の安否やペットなどが気がかりだと、心理的要素もあって、できるだけ早く帰宅したくなるものです。しかし、自分ひとりぐらいは動いても影響ないだろうと考え、あらゆる手段を使って連絡をとり帰宅しようとすると、積もり積もって通信の輻輳を生んだり、道路にあふれかえる帰宅者の人並みや車の渋滞で緊急対応車が通れなくなったりし、大きな影響を与えてしまうのです。

もうひとつ、深刻な被害が発生する要素も潜んでいます。「群衆雪崩」です。特に人が集まるスポットやターミナル駅周辺などでは、密集した群衆が折り重なって倒れる現象を招き、多数の死者が発生するおそれがあります。東日本大震災時の帰宅困難者は、首都圏(1都4県)で約515万人、東京都内だけで約352万人にもなりました。30kmもの距離を歩いて帰った人も多かったとされています。首都直下地震が発生した場合も、東日本大震災時の同様に、徒歩で帰ろうとする人が多いと考えられますが、想定される帰宅困難者は最大で800万人、東日本大震災時の1.5倍にもなります。

先日起きた韓国のハロウィーンイベントで起きた事故のように、前にも後ろにも動けないほど密集した状態へビルや地下街の出入り口から人がさらに続々と流れ込む中、大きな余震で我先にと逃げようとする人が押しあったり、つまずいて倒れ込んだりする人がそこかしこで発生し、将棋倒しになっていく「群衆雪崩」が起きるおそれがあるのです。

群衆雪崩を防ぐには、「すぐには移動しない」「人の多いところに行かない」という対策を徹底させる必要があります。人が集まっているところには情報も集まっていそうな気がして近づきたくなりますが、危険なので近寄らないようにし、情報はスマートフォンなどのデバイスから収集することを心がけてください。特に、朝夕に通勤移動の波があり昼間人口が集中する都市部では、一人ひとりのちょっとした動きが大きな影響につながります。都市部の企業は、事業規模にかかわらず災害発生時の帰宅困難者対策を見直すようにしましょう。

<外出時の万一に備えて>
移動時には、万一のときに必要となる必要最低限のものをまとめておくと安心です。
「防災ポーチ」にまとめれば、かばんを替えたときでもさっと移し替えができて便利です。
使用期限があるものは、ローリングストックの考え方で普段から使いまわしておくとよいでしょう。
・モバイルバッテリー、ケーブル
・ウエットティッシュ、消毒スプレー、マスク
・小銭
・携帯トイレ、アルミブランケット、携帯用カイロ
・小型のライト、ホイッスル
・常備薬、コンタクトレンズケアの予備、生理用品
・常温の飲み物、機能性食品

防災ログ事務局:南部優子


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