ハザードマップの限界と社会がとるべき対策(1)被災の3割は想定外で置きている コラム

2019年11月22日

11月22日 この秋に猛威を奮い、甚大な被害が発生した台風19号では、92人の方が亡くなられました。NHKが河川・土砂災害に詳しい静岡大学の牛山素行教授と検証した結果では、亡くなられた方の場所とハザードマップの土砂災害危険箇所や河川氾濫時の浸水想定区域を重ね合わせたところ、想定された範囲内での被災が7割、指定された範囲外での被災が3割に上る結果となりました。つまり、リスクがあると思っていなかったところで亡くなられているのです。この背景には、2つのアプローチがあったと考えられます。

ひとつは、ハザードマップに対する認識の問題です。
ハザードマップをみるとき、一般的な感覚だと、土砂災害や浸水の危険があると色が入っていない箇所は「安全」だという意味にとれるかもしれません。ですが、ハザードマップは、地理的な条件や社会的なまちの構造から考えたときのリスクが高いか低いかと示しているだけであり、安全であるとうたっているわけではないのです。さらに言えば、マップを作成するときの調査の方法についても限度があります。例えば、河川の浸水想定については、国の管理する一級河川や県の管理する主だった河川は調査の対象になりますが、支流の川など中小河川は対象になりません。水防法では、流域面積が広い川や洪水が置きた時に周囲への影響が大きい下線を対象にすることになっており、すべての川が対象ではないのです。今回の台風で堤防が決壊した全国の河川は71にのぼりますが、そのうちの43河川、約6割もの川は、浸水想定を検討する対象外の河川でした。
ハザードマップはあくまでも地域のリスクの目安にすぎないのです。

もうひとつの問題は、今回の台風で被害に遭った人の15%が、仕事中または通勤・帰宅中で、屋外で移動しているときだったという点です。
近年、毎年のように水害や土砂災害といった気象災害で被害が発生しているにもかかわらず、災害への備えは、地震災害が中心となってきていました。たしかに地震のほうがインパクトの大きな被害が突然やってきますし、気象災害は数日前からの予測ができるため、いざとなったら回避できそうな気がしてしまうというのもあるかもしれません。
しかし、近年は極端な気象現象も増加しており、豪雨や河川氾濫・堤防決壊なども珍しくなくなってきました。暴風雨や大雪などを見越し、都市部の公共交通機関は計画運休の実施をためらわず行うようになってきています。これを受け、都市部など公共の交通機関で通勤・通学する必要のある企業や学校は社会活動を一時的に停止させたり、移動を伴わないスタイルに切り替えたりする動きも多くなっています。
ところが、自家用車での移動が多い地方では、車に守られて移動できそうに思えるだけに、気象状況に応じて計画的に社会活動を抑制するといった事業継続の考え方がまだ浸透しておらず、混乱が生じているといえるのではないかと思います。

ハザードマップは信用できないというのでしょうか。
私達は何を目安に、どんな行動をとればよいのでしょうか。

次回は、正しくリスクを認識し、とるべき対策について考えていきたいと思います。

防災ログ事務局:南部優子


関連ニュース