気象庁、線状降水帯からの大雨情報を発表する方向へ 防災ニュース

2021年4月28日

4月28日 気象情報に新たな内容が加わりました。気象庁は、大雨をもたらす「線状降水帯」が発生した場合に新たな情報を出し、警戒や安全確保を呼びかけることにしました。線状降水帯は、前線や低気圧に向かって湿った空気が流れ込み、大気の状態が不安定になって狭い範囲に発達した積乱雲が帯状に連なる気象現象です。発生すると短時間で急激な大雨になってしまうため、土砂災害や洪水が発生する危険度が一気に高まってしまいます。

記憶に新しいところでは、昨年7月の豪雨災害があります。熊本県の上空で線状降水帯が断続的に発生し、球磨川が氾濫。橋の流出、広範囲の水没、集落の孤立、土砂崩れなど、救助要請が相次ぎました。複数の住宅に土砂が流れ込んで巻き込まれた、停電や通信障害も重なって連絡がつかないなど、大きな被害となりました。この豪雨災害では、後の検証により、球磨川が氾濫する約3時間前、上空に線状降水帯が発生していたことが分かっています。

線状降水帯が発生すると急激に危険が高まります。通常の気象情報では予報が追いつかないため、気象庁では、線状降水帯の発生状況をリアルタイムで知らせることで危険を感じて対処できるようにしたものです。線状降水帯の発生による大雨が確認された場合、命に影響する状況が急激に迫っていることを知らせ、厳重な警戒や身の安全の確保を呼びかける情報として「顕著な大雨に関する情報」が発表されます。

線状降水帯の発表基準は、5km四方の3時間解析雨量が100mm以上あり、降水範囲の分布が500km2以上確認された場合で、降水の領域の形が線状になっていることなどとされています。今年の出水期から情報の運用を始める予定です。

今回の気象情報について、ひとつ注意すべき点があります。それは、線状降水帯の発生そのものの予測ではなく、すでに発生したものを確認したときに発表される情報だというところです。

線状降水帯の情報が発表されたときはすでに災害発生の危険度が急激に高まっている状態です。気象庁から発表される前にすでに被害ができているケースも少なくありません。また、発表されたときにはもう外へ出て避難するのは難しくなってしまっている可能性もあります。

線状降水帯の発生を知らせる「顕著な大雨に関する情報」以外にも、警報や特別警報、記録的短時間大雨情報など、気象情報は種類がたくさんあります。このため、正しい情報がすばやく受け取れない懸念も指摘されており、気象庁では今後も防災情報の発表方法や気象情報の提供のあり方について検討し、改善を続けることにしています。

災害の情報は、伝え手の工夫はもちろん重要ですが、受けとる側も積極的に情報を取りに行って身を守るために活用する姿勢が必要です。過去に災害が起きているなど、洪水や土砂災害のリスクが高い土地にいる人は、あらかじめハザードマップで確認し、市町村・気象庁からの情報をこまめにとれるよう、日頃から注意しておき、早めの避難を心がけましょう。

画像出典:気象庁 雨雲の動き(高解像度降水ナウキャスト2020年7月4日07時15分)のスクリーンショット)
防災ログ事務局:南部優子


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