防災と地図は切っても切れない仲(1) コラム
2017年1月29日
1月28日、「地図と言えばゼンリン、ゼンリンといえば地図」と言われるくらい、日本の地図業界のトップを走るゼンリン。「今どき地図なんかは買わずに、Googleで調べるよ」なんて言う人も、GoogleMapの右下を見てほしい、「地図データ (C)Google ZENRIN」の文字が確認できるはずだ。つまり、天下のGoogleだってゼンリンの地図なしではマップサービスを展開することはできない。そして地図と防災は切っても切れない間柄。地図マニアでもある“防災の鬼”渡辺実氏がゼンリンの心臓部に潜入する。
対応してくれたのはゼンリン 上席執行役員 第一事業本部長の山本勝氏。まずは“防災の鬼”渡辺実氏の第一声。
「ゼンリンさんには大昔から本当に世話になっているんですよ。私は街づくりに携わることが多く、町並みのデザインから地域防災のアドバイザーまでやるので、地図とは切っても切れない生活なんですよ。被災地入りするときも、まずは地元の住宅地図を集めるところから始めます」(渡辺氏)
去年3月に発生した熊本地震のときは、地元入りはしたものの、地図が手に入らなくて困ったらしい。
「昭文社さんなど、普通の地図も書店の店頭から消えていましたよ」(渡辺氏)
「我々も埼玉県の坂戸にある拠点から熊本の住宅地図をありったけ集めてチャーター便を飛ばして対応しました。最初に被災した益城町は全社に声をかけたのですが、9冊しか集まりませんでした。慌てて増刷しました」(山本氏)
ゼンリンは福岡県北九州市に本社を置く地図専門の会社だ。特に全国の住宅の世帯名までが書き込まれた「住宅地図」に関しては他社の追随を許さない。毎日1000人規模のスタッフが全国70カ所の拠点をベースに、地域を歩き情報を集めている。
「不審者と間違われることもたまにあります(笑)」(山本氏)
こうしてまさに足で集められた地図情報が様々な場面で人々の生活を支えている。ネット地図にしてもGoogleに限らずYahoo!やマイクロソフトの「Bing」などのWeb地図もベースはゼンリン製だ。
「さらに最近では目に見えない地図、つまり車の自動運転をサポートするための地図やドローンの自律飛行をサポートする地図など、人が読む地図ではなく”機械が読む地図”の研究開発が盛んになっています」(山本氏)
スマホやパソコン上で見ることができる地図も便利だが、紙の地図にはネット上のデータ地図にはない使い勝手の良さと魅力がある。
▶︎ここから先はこちらから
渡辺 実(わたなべ・みのる)
防災・危機管理ジャーナリスト/株式会社まちづくり計画研究所 代表取締役所長/技術士/防災士