盛土は水を含みやすく土砂災害の威力が増す 熱海市の土石流災害 防災ニュース

2021年7月18日

7月18日 静岡県熱海市の土石流災害が発生から2週間を超えました。18日時点で、死者18人、行方不明者14人となりました。2km先の海岸まで達する大量の土砂と急斜面という地形に阻まれ、消防・警察・自衛隊などによる捜索活動は難航しています。市内で避難所となっているホテルには、今もなお470名を超える人たちが避難生活を強いられています。

一方、少しずつですが日常生活を取り戻そうという動きも始まっています。1000件を超えていた断水は、8割ほど解消しました。また、被災地に近いため休校となっていた小学校の授業が再開されています。市税の納付期限を延長するなどの被災地への支援も進みつつあります。

今回の土砂災害は、いわゆる「長雨蓄積型」とも呼べるもので、さらには盛土部分の崩壊が被害を大きくしたと指摘されています。盛土は自然にできた地盤より水を多く含むため、崩壊後の土石流の速度が上がり、威力を増したのではないかというものです。静岡県では、今後専門家委員会を設置し、造成の経緯や行政の対応などを調査する予定です。

国の動きも出ています。国土交通省は、国土地理院のデジタル地図を活用し、盛土の全国調査を行うと発表しました。2000年ごろまでのデータと2008年以降のデータを比較し、地形が変わっているところから標高の差分を抽出し、盛土の可能性がある箇所(標高差+5m以上)を関係省庁や自治体へ提供。違法な開発などを行っている箇所がないかを自治体が検証する助けになるとしています。

土石流をはじめとする土砂災害は、災害が起きてしまってからでは逃げ切れません。事前に起きやすさを知っておき、早めに区域から出る避難が不可欠です。盛土の調査はこれからですが、いますぐに確認できるハザードマップがあります。土砂災害の危険度が高い箇所は「土砂災害警戒区域(イエロー/レッド)」として地図になっています。パソコンでもスマートフォンでも確認できます。事前に危険性を知っておくからこそ、大雨などの気象情報が出たときの判断や避難のタイミングが適切になるのです。

日本は国土の3分の2が森林で、そのうちの約4割が人工林です。全国のどこでも熱海市とよく似た地形や開発事情を抱えているといえます。今回の盛土による土石流災害は、決して特殊な地域での話ではないのです。いのちをなくしては元も子もありません。行政の対応や民間の動きなど理由をつけて問題を先送りにせず、今自分たちにできることは何かをよく考え、備えていきましょう。

画像提供:国土交通省「盛土の可能性のある箇所の概略的な抽出について」より、基盤地図情報数値標高モデルと航空レーザ測量データの標高差分から地形変化可能性箇所を抽出したもの

防災ログ事務局:南部優子


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