真東へと異例のルートをたどった台風14号 防災ニュース

2021年9月21日

9月21日 9月7日にフィリピンの東方沖で発生した台風14号(チャンスー)は、西廻りで北上し、東シナ海に入ってから4日間も足踏みするように停滞したあと、まっすぐ東へ向きを変え、勢力を再発達させて日本にやってきました。台風14号は、気象庁の記録が残る1951年以降初となる福岡県へ上陸した後、四国や和歌山などを通過しながら日本列島を横断、18日午後に静岡県の沖合で温帯低気圧となりました。

この台風の影響により、三重県で82mm、神奈川県で65.5mmの1時間雨量を観測したほか、三重県をはじめとし各地で浸水被害が発生し、東海や関東を流れる川で一時氾濫危険水位を超えるなどの影響がありました。台風から温帯低気圧に変わってからも、東北付近にある別の低気圧に向かって湿った空気が流れ込んだこともあり、東日本・北日本で大気の状態が不安定になりました。

台風14号が特異なルートをたどった原因には、偏西風の蛇行と海面水温の高さが指摘されています。今年は太平洋高気圧の南西への張り出しが例年より大きく、西寄りのルートになっていたのですが、偏西風が北側へ蛇行したことと、移動性高気圧が北側に張り出していたこともあって、台風の頭を押さえつけられたようになり、足踏み停滞することになってしまいました。中心気圧もいったんは弱くなっていたのですが、東シナ海の水温が例年より1度ほど高かったため、勢力を回復した状態で動き出した偏西風に乗って東へ移動してきたのです。

「台風」と名前を付けているのは人間側の都合であり、台風もその他の低気圧も連続的に存在するものです。温帯低気圧に変わってからも数日間は台風並みの勢力をもっていることが多く、中には途中で台風に戻ることもあります。大気が不安定な状況となり、大雨や強風、突風、高波、落雷などの影響を与えます。

台風は、水温や気流、周囲の気圧など、さまざまな要素で勢力や進路を変えていきます。地球温暖化の影響なども受け、いつものルートでない台風も増えてくるかもしれません。また、秋の台風は前線が停滞する中へやってきます。台風の進路上にない遠く離れた地方でも、湿った空気を大きく運び、前線を活発にしてさらなる被害を発生させる場合も考えられます。すでに一定の雨量が降っているところへ強い低気圧に運ばれた激しい雨が降ると、思いも寄らないところで土砂災害や浸水被害が発生するおそれもあります。

呼び名が台風であろうと温帯低気圧であろうと、気象災害でなすべきことは同じです。最新の気象予報をこまめにチェックし、進路にあたるエリアの場合は、気象警報や土砂災害警戒情報などの災害情報に警戒する姿勢を怠らないようにしましょう。

画像提供:ウエザーニュース 台風14号:チャンスーの予想進路(2021年)より

 

防災ログ事務局:南部優子


関連ニュース