2021年度介護報酬改定の検証進む BCPの義務化など

2021年9月22日

9月22日 2021年度は、3年に1度の介護報酬の改定年度にあたります。9月10日に第23回厚生労働省社会保障審議会が行われ、年度開始から実施された報酬改定の効果を検証する方向性などが検討されました。2021年度の介護報酬改定は、第一の柱に感染症や災害への対応力強化を掲げています。その背景には、地球温暖化などにより自然災害が多発また激甚化することや、感染症の世界的な流行が長期化し、災害の複合化が進んでいることなどがあります。

介護サービスは、利用者や家族の生活を支える上でとても重要です。災害や感染症の流行が発生したからと介護を中断すると生活が困難になるほどの甚大な影響を与えます。また、災害時にひっ迫する医療サービスへの影響を避ける上でも、介護サービスの事業継続が不可欠です。ところが、介護サービス事業者の業務継続計画(BCP)策定率はかなり低く、内閣府(令和元年度企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査、2020年3月)によると、医療・福祉関係のBCP策定率は22.2%と、全体の41.8%と比べてかなり低くなっています。

このため、今回の介護報酬改定では、非常時への対応力強化として、以下の事項が決定されました。
・感染症対策の強化
・業務継続に向けた取組みの強化
・災害への地域と連携した対応の強化
・通所介護等の事業所規模別の報酬等に関する対応

業務継続に向けた取組みの強化では、すべての介護サービス事業者を対象に、業務継続計画(BCP)の策定、研修・訓練の実施を義務付けています(3年間の経過措置期間が設けられています)。
介護施設・事業所の業務継続に関しては、厚生労働省から事前災害時と新型コロナウイルス感染症発生時の2種類の業務継続ガイドラインやひな型が公開され、研修動画も作成されています。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/douga_00002.html

また、地域連携では、通所・施設系事業者に対し、訓練を実施する際には地域住民の参加が得られるよう、普段からの連携に努めなければならないとしています。さらに、感染症や大規模災害で利用者が大幅に減った場合には報酬の算定を利用者が減少した月を基準として事業所規模別の報酬区分が算定できるルールも加えられました。

2021年度の介護報酬改定の効果については、9月27日に介護報酬改定検証・研究委員会が調査票を決定し、10月から11月に調査、翌1月から2月に分析・検証を行い、3月に評価を行う予定です。調査による検証は毎年実施し、2024年の次回改定に反映されます。

2025年は、団塊世代がみな75歳以上を迎える年です。その前年での改定ということもあり、次回はさらに踏み込んだ内容となる可能性が高いともいわれています。介護報酬改定の意図をよく汲み取り、今後の事業方針とあわせて本質的な対策をとっていきましょう。そうすることで、今後どのような方向が提示されようとも、ぶれずに事業を進めていくことができるはずです。

BCPは言われたから作るというものではありません。毎回様相の異なる災害へも動じず、ほんとうに必要とされる介護サービスを提供することができるよう、トレーニングや訓練を通じ、「災害時でも介護が必要とされている人へ届けるのだ」というBCPの心とスキルを醸成していきましょう。

画像提供:厚生労働省 令和3年度介護報酬改定について より「令和3年度介護報酬改定における改定事項について」P4

 

防災ログ事務局:南部優子