進まない女性委員の登用 防災の備蓄などに大きな影響
2021年10月4日
10月4日 地方自治体の防災対策を検討する要となる地方防災会議の女性委員比率が上がりません。政府は、第5次男女共同参画基本計画(2020年12月25日閣議決定)で2025年までに地方防災会議における女性委員の比率を30%にすることを目標に掲げています。しかし現状は厳しく、2020年4月現在で都道府県の平均が16.1%、市町村の平均が8.8%と、程遠い状態です。
【防災計画に女性の視点がなぜ必要か】
防災計画を策定するメンバーの中に女性を加えることにより、女性の目線に立った検討を行うことができ、男性だけでは見落としがちなニーズや対策が取り入れられます。災害は、発生直後の救助救急で命を守れば完了するわけではありません。特に大規模になると長期にわたり生活の維持に大きな影響が生じます。こうしたフェーズに力を発揮するのが女性の視点です。
内閣府男女共同参画局がまとめた「災害対応力を強化する女性の視点~男女共同参画の視点からの防災・復興ガイドライン~」によると、防災会議の女性委員比率が高いほど、各種生活用品の備蓄比率が高くなることが調査により明らかとなっています。特に、女性用品、乳幼児用品、高齢者用品、プライバシーを守る物資の割合が際立って高くなりました。
【市区の2割以上、町村の3割以上で女性が不在の会議が開かれている】
一方で、地方防災会議を構成するメンバーの女性比率は低いままになっています。地方防災会議は、各地域の防災対策の基礎となる地域防災計画を策定する最も重要な機関です。市区町村を対象に調査した2020年のデータをみると、最高でも18.2%(岡山県)、最低だと3.4%(北海道)です。全国の市区町村1741のうち、目標の30%以上となっているのはたったの25。女性がまったくいない市区町村も348、全体の21.8%にのぼります。町村になるとさらに比率は下がり、全国926町村のうち303、37.2%と3分の1以上が女性の委員が不在の状態になっています。
【どうすれば増える? 女性委員】
女性委員はなぜ増えないのでしょうか。その要因のひとつに、会議を構成する職員が職で指定される「充て職」や、指定された職の長を務める人のほとんどが男性であることなどが挙げられます。
地方防災会議を構成する委員は次のように構成されています(災害対策基本法第15条第5項)
1 当該都道府県の区域の全部又は一部を管轄する指定地方行政機関の長又はその指名する職員
2 当該都道府県を警備区域とする陸上自衛隊の方面総監又はその指名する部隊若しくは機関の長
3 当該都道府県の教育委員会の教育長
4 警視総監又は当該道府県の道府県警察本部長
5 当該都道府県の知事がその部内の職員のうちから指名する者
6 当該都道府県の区域内の市町村の市町村長及び消防機関の長のうちから当該都道府県の知事が任命する者
7 当該都道府県の地域において業務を行う指定公共機関又は指定地方公共機関の役員又は職員のうちから当該都道府県の知事が任命する者
8 自主防災組織を構成する者又は学識経験のある者のうちから当該都道府県の知事が任命する者
市町村防災会議の組織は、上記都道府県防災会議の定めに準じることとしています(同第16条第6項)
しかし、上記の定めの中でも女性比率を高くする工夫はできます。たとえば、
5号:医療福祉部門の課長級の女性管理職
7号:報道機関で働く女性、看護協会・助産師会・社協・保育会・幼稚園連合会、女性団体・NPO法人などから指定
8号:大学の女性教授・准教授、自主防災組織・消防分団の女性委員
など、指名や任命する際に選定する団体を工夫したり、地方防災会議に専門部会を設けたりしているところもあります。
今回取り上げたのは地方自治体が定める防災計画の要となる防災会議の委員でしたが、民間の企業や団体でも同じことがいえます。
みなさんの組織では、女性の比率は何割でしょうか。多様性のある視点を確保しているでしょうか。
いまいちど「そもそもの検討の土壌」に偏りがないかを確認し、多様な視点で備えることをおすすめします。
参考文献
内閣府 令和3年度防災白書 第1部 我が国の災害対策の取組の状況等
http://www.bousai.go.jp/kaigirep/hakusho/pdf/r3_dai1bu1-1.pdf
内閣府男女共同参画局 地方公共団体における男女共同参画社会の形成又は女性に関する施策の推進状況(令和2年度) 集計表 4-8地方防災会議の女性委員の登用(市区町村)
https://www.gender.go.jp/research/kenkyu/suishinjokyo/2020/pdf/rep/04-8.pdf
内閣府男女共同参画局 災害対応力を強化する女性の視点~男女共同参画の視点からの防災・復興ガイドライン~
https://www.gender.go.jp/policy/saigai/fukkou/pdf/guidelene_01.pdf
防災ログ事務局:南部優子