避難に関する記号、読み解けますか?

2021年11月10日

11月10日 なんとなく見慣れた避難の地図記号ですが、実は全国統一されたのは5年前と最近の話。それまでは各地域で思い思いにデザインしていました。全国統一のきっかけとなったのは東日本大震災でした。2013年の災害対策基本法の改正時に「指定緊急避難場所(災害発生直後にいったん安全を確保する場所)」と「指定避難所(当面の間命をつなぐために身を寄せる場所)」に関する規定が設けられました。

その後、避難場所・避難所のデザインを全国的に統一しようという動きが高まり、内閣府と消防庁が主体となって災害や避難に関する図記号の統一の取り組みが進められました。そして2016年、JIS(日本工業規格)の「災害種別避難誘導標識システム」が制定されたのです。図記号は、単にデザインされただけでなく国家標準として登録されたことにより、全国的な統一もスムーズに進んだといえるでしょう。

「災害種別避難誘導標識システム」の図記号は、国際的な規格のISOにも認定されています。各国での理解度もクリアしているため、国籍や言語が異なる多様な文化の人たちにとっても認識しやすくなっているところが特徴です。

避難のマーク
安全を想起させる緑を用い、避難している人の格好を模したピクトグラムで表されています。逃げる人の格好は、建物の非常口の図記号を取り入れています。非常口の記号は、1972年の大阪千日前デパートの火災がきっかけで開発されたもので、かなり前から避難のイメージが定着している図といえます。

「緊急避難場所(広域避難場所)」は一時的に安全を確保する場所で、大きな公園など屋外の広い空間を指定することが多いため、楕円形で場所が示されています。
「避難所」は、被災して自宅に住めなくなった人を一時的に滞在させる施設で、建物をイメージさせる記号になっています。
「津波避難場所」は、津波から逃れるための高台や安全な場所で、「津波避難ビル」は近くに高台がないときの緊急避難用のビルです。

「緊急避難場所」「避難所」の表示には、どの災害から避難するものなのかがわかるよう、災害種別の図記号が併記されます。これらは白地に黒で描かれます。
災害種別の図記号には、「洪水/内水氾濫」「津波/高潮」「土石流」「がけ崩れ/地すべり」「大規模な火事」の5種類あります。実は地震そのものは記号になく、地震によって発生する津波や大規模火災でカバーしているのですが、地震マークの希望が多かったため、日本標識工業会オリジナルでマークがつくられています。

災害種別の図記号は黄色地に黒で描かれた三角形のマークもあります。これは、あらかじめ注意しておけるよう、被害を受ける可能性が高い地域に設置されています。道路標識にも多いデザインで、注意の認識を高めるものになっています。

上記の災害時の図記号については、日本標識工業会が「災害種別避難誘導標識システム」JIS Z 9098 防災標識ガイドブックを発行しています。マークとして認識させるため、色味やフォント、サイズなど細かな規定も記載されていますから、表記の参考にするとよいでしょう。

(「災害種別避難誘導標識システム」JIS Z 9098 防災標識ガイドブック)
http://www.signs-nsa.jp/pdf/top/bousai.pdf

みなさんの周辺にはどんな記号があるでしょうか。街を歩いたときに少し意識すると、意外なところにマークが潜んでいるかもしれません。ゲームなどにしてチームに分かれて探してみるのもよさそうです。
ふだんからの目配りが、いざというときの行動の意識付けにつながります。ぜひ図記号にも着目してみてください。

画像提供:内閣府 避難場所等の図記号の標準化の取組 JIS Z9098データ集より 洪水避難情報標識の記載内容図

 

防災ログ事務局:南部優子