デジタル管理が備蓄食を変える

2021年11月26日

11月26日 命をつなぐはずの避難所にやっとの思いでたどりついたのに、つなぎきれないで力尽きる人たちがいます。その要因のひとつ、備蓄食や配食の問題をみていきましょう。

自治体が指定する避難所には、あらかじめ備蓄食が管理されており、災害時には放出されます。また、国の対策にも、大規模災害時には自動的に食料・飲料水など重要品目をプッシュ型で(どのくらいの量が必要かを聞き出す時間を省略し、見込みで先に手配し)被災地に送るシステムがあります。

しかし、こうした備蓄食は大多数に合わせて備えられているため、次のような特殊な食事の事情がある人たちについては、自力でなんとかしてほしいといわんばかりの対応しかないのが現状です。
・高血圧や腎臓病など特定の食品を口にしてはいけない人
・食物アレルギーのある人
・宗教的理由により特定の食材を口にしない人
・乳幼児
・咀嚼や嚥下がしづらい高齢者

このような食に対するニーズは、「災害時に贅沢を言ってはいけない」という風潮におされて表に出づらい傾向があります。しかし本人たちにとっては、口にすると命に関わるような重大な問題であって、せっかく配ったのだから我慢して食べるべきだという話ではありません。

備蓄食の問題は、すべての人が、一人ひとりの命を大切し、災害関連死を防ぐために多様な備えが必要になのだと理解することが大前提です。その上で、実際にどうやって備蓄管理や被災時の調達をすべきかを検討しなければなりません。

被災者の切実なニーズに応える備蓄食の管理運営方法として今後注目されるのがデジタルデータによるシステム化、「防災DX」です。ニーズ側である要配慮者のデータと在庫の入出状況のデータが結びつくことによって、配食や調達、在庫管理などが効率的に行えるようになります。また、近年の少子化によって個別の自治体や企業では運用の限界がある課題についても、データ管理を統合化することにより、広域防災システムが強化され、可能性が広がります。

ITシステムによる備蓄革命は、全国の12自治体で導入が進み始めています。
防災DXの取り組みに、今後も注目していきましょう。

防災ログ事務局:南部優子