災害の伝承を今に活かそう 自然災害伝承碑を「重ねるハザードマップ」に掲載開催

2021年12月8日

12月8日 日本は古来、地震、津波、土砂災害、洪水、高潮など、多くの自然災害に見舞われてきました。そして、大きな被害が発生した際には、荒ぶる自然と向き合うため、被害のようすや災害からの教訓を後世に伝えようと被災箇所に石碑を建立し、碑文にその教訓を刻んできました。しかし近年は、土地の開発などが進んで地形がわかりにくくなっているところもあり、石碑を目にしてもその内容には関心が払われず、せっかくの伝承が活かされることなく被害を出してしまっている例も少なくありません。

実際に起きた被害からのメッセージほど、訴える力の強い教えはないでしょう。国土地理院では、こうした災害からの教訓を現在に伝えるため、「自然災害伝承碑」の情報をとりまとめて地形図等に掲載しています。

自然災害伝承碑は、過去に発生した津波、洪水、火山災害、土砂災害などの自然災害によってもたらされた災害の様相や被害状況などの事柄が記載されている石碑やモニュメントを指します。これまで自然災害伝承碑は、人物やできごとを記念して建てられる「記念碑」に含まれていましたが、そこから自然災害の事象を独立させ捉えようというわけです。

自然災害伝承碑の多くは当時の被災場所に建てられ、また被災状況を伝える碑文が刻まれています。自然災害伝承碑を地図上に掲載し、碑の名称と場所を明示することは、その地域に住む人々にとってハザードを意識し、防災行動を見直すきっかけになると期待されます。

国土地理院では、全国の自治体と連携して自然災害伝承碑に関する情報の整備を進めており、2019年6月より、国土地理院のウェブ地図「地理院地図」から掲載を開始しています。2020年8月からは碑のデータがダウンロードできるようになり、2021年11月からは、ハザードマップポータルサイトの「重ねるハザードマップ」へ掲載されるようになりました。

2021年11月時点で公開中の碑は、全国339市区町村1116基にのぼります。
【自然災害伝承碑の情報】
(1)碑名:自然災害伝承碑の名称
(2)災害名:同碑の対象となっている災害名
(3)災害種別:同碑の対象となっている災害の種類
(4)建立年:同碑が建立された年
(5)所在地:同碑の所在地
(6)伝承内容:碑文に記載された内容、死者数や建物被害など被害の規模を示す補足情報等
(7)写真:同碑の写真

自然災害伝承碑は、地域防災や学校防災、職場などで、防災マップづくりやまち歩きの教材にしたり、訓練時の災害想定の参考にしたりと、身近で実践的な教材として活用することができます。ぜひ、家庭や職場周辺の伝承碑を探して訪ねてみてください。「こんなところに」と思うような意外な場所で災害を身近に感じることができるはずです。

 

画像出典:国土地理院ホームページ 自然災害伝承碑利活用事例より作成

 

画像出典:重ねるハザードマップ

 

防災ログ事務局:南部優子