今シーズンは大雪の傾向 交通への備えを忘れずに

2021年12月13日

12月13日 今冬は2年連続でラニーニャ現象が発生しており、日本列島の広い範囲で例年より大雪となる可能性が高まっています。とくに、寒気が南下しやすい1月下旬から2月にかけては注意が必要です。昨シーズンは、年明けの1月7日から冬型の低気圧が発達し、北日本から西日本の日本海側を中心に大雪となりました。平年の7倍以上も積雪した地点もあり、死者15名、重軽傷者310名、住家被害258棟と大きな被害が発生しました。山間部での倒木や積雪により孤立集落も発生し、福井県内の北陸自動車道では約1600台の自動車が立ち往生しました。

昨シーズンの大雪をもたらした原因には、「日本海寒帯気団収束帯(JPCZ)という、雪を呼ぶ気流のラインが生じたことが挙げられます。JPCZは、朝鮮半島北部の山脈で二分された大陸の寒気が比較的暖かな対馬海流の上で合流することにより大量の水蒸気をまきこんで帯状の雲が発生し、寒気と相まって発達した雪雲になって日本海側に流れ込んでくる現象です。成り立ちは異なりますが、大雨をもたらせる線状降水帯の雪版、といったイメージでしょうか。短時間で一気に雪を降らせるため、雪対応に慣れているはずの地域でも処理が追いつかず、今回のような交通の乱れを生じさせたり、除雪ができなくなるほどの降雪や積雪になって建物が倒壊したりと、深刻な被害が発生する恐れもあります。

昨冬は大規模は車両の立ち往生が多く発生しました。先に挙げた北陸自動車道のほか、東海北陸自動車道の富山県内や国道8号線の新潟県内でも同時多発的に起きました。その前月の12月中旬では、新潟県の関越自動車道で2000台を超える大規模な滞留が発生していました。

このような状況を踏まえ、国では冬期道路交通確保対策検討委員会を立ち上げ、大雪の道路交通について検討してきました。この中で、大雪災害時は、「道路ネットワークの交通機能の確保」から「人命を最優先にした車両滞留の徹底的な回避」へと方針を転換し、躊躇なく予防的・計画的に通行規制を行うこととしています。

近年の短期集中的な降雪では、道路の除雪作業を主体とした交通確保が難しくなっています。このため、道路はできるだけ通行止めにしないことを目標にするのではなく、安全確保を第一として早めに(気象予報や積雪状況に基づき概ね3時間前を目安に)通行止め区間を決めることを基本とします。大規模な車両の滞留をへらして通行止めになる時間をできるだけ短くすることにより、道路交通への影響を最小限に抑える方向へと変わったわけです。

ユーザー側では、次のような点に注意し、今シーズンの大雪に備えておくことをおすすめします。
●「冬の高速道路ガイド(安全チェックポイントマップ)」でスタックが発生しやすい場所を把握する
●移動前に天気予報、交通状況を確認する
●大雪が予測されるときは不要不急の外出を控える
●広域的な迂回や出発時間の変更など、運行計画を見直す
●冬用タイヤの装着とタイヤチェーンの携行(どちらか一方ではなく両方備える)

大雪が予想される場合、降雪の3日前から外出を控えたり広域迂回を促したりするアナウンスが出される予定です。通行止め予測区間、開始日時、迂回経路などの詳細情報は、1日前から6時間ごとに更新され、定期的に公表されます。気象情報は事前に予報が出され、回避ができます。降雪・積雪に慣れていない地域も、慣れている地域も、対応力を超えた大雪になる場合を想定し、今から備えておきましょう。

防災ログ事務局:南部優子