緊急地震速報の的中率は高い? 低い?

2021年12月21日

12月21日 緊急地震速報は、最大震度5弱以上の揺れが予想されるときに気象庁が発表し、震度4以上の揺れが予想される地域に放送されます。実際の揺れが来る前に予想で発表される警報ではありますが、その時間差はとても短く、十数秒から数十秒しかありません。特に直下型の地震は内陸の浅い場所で発生するため、震源に近い場所だと緊急地震速報のほうが実際の揺れより後に放送されることもあります。

では、緊急地震速報の的中率はどのくらいあるのでしょうか。緊急地震速報の発表は2007年10月から始まり、計算式など技術的な改善を重ねています。2021年3月までの全体では、緊急地震速報を発表したものの実際の震度が4未満だった「空振り」は24%でした。また、緊急地震速報が発表されなかったが実際に震度5弱以上を観測した「見逃し」は41%でした。2020年度単独でみると、空振りは12%、見逃しは33%となっています。

緊急地震速報で得られる猶予はわずか数十秒です。その間に安全装置が働いて致命的な被災を免れる可能性は高まりますが、とっさの安全確保の行動を冷静にとるのはなかなか難しいものです。
地震は事前に揺れによる被害を少しでも抑制する対策が必須です。次のような備えを見直しておきましょう。
・建物の耐震化
・家具、什器などの転倒防止
・備品の落下防止
・ガラスの飛散防止

【緊急地震速報のしくみ】
緊急地震速報は、大きな地震が発生した直後に地震計が捉えた観測データを解析しています。地震が発生すると、震源から地震波が地面を通じて伝わってきます。地震波にはP波(Primary;最初の波)とS波(Secondary;二番目の波)があり、強い揺れで被害につながるのは主にS波です。P波は秒速約7km、S波は秒速約4kmと、P波のほうが速く伝わるため、この差分を活用したのが緊急地震速報です。
先にくるP波を検知したときに地震の位置と規模(マグニチュード)を推定し、震度とS波の到達時刻を予測し、S波が来る前に発表します。地震波の速度は秒速4~7kmですが、情報を伝える電気信号は原理的には光の速度(秒速約30万km)と速いため、地震が発生した場所の近くの地震計で地震波を検知したときに電気信号で気象庁に伝え、これから揺れることを知らせているわけです。緊急地震速報に活用している観測点は、気象庁が全国約690箇所、国立研究開発法人防災科学技術研究所が全国約1000箇所あります。

P波とS波の時間差はわずかです。観測網や解析技術の改良により予想震度は年々精度を挙げていますが、それでも次のような要素により、どうしても誤差が発生してしまいます。
・震源地が浅い(距離が短いため、速報より先に揺れが来る)
・観測網から100km程度以上の比較的遠い場所(震源やマグニチュードの誤差が大きくなる可能性)
・深さ100km程度より深い場所(実際より大きな震度など誤差が大きくなる可能性)
・マグニチュードの大きな地震(精度よく推定するためには時間が長く必要)
・観測点のハードの故障(事故、落雷、通信障害など)
・交通機関や工事などの振動(1点で観測している場合は誤って振動を拾ってしまう可能性)

防災ログ事務局:南部優子