震災津波の犠牲者はリアス海岸沿いが9割近くに 東北大調査 防災ニュース
2022年3月9日
3月9日 まもなく東日本大震災の発生から11年が経とうとしています。このほど、東北大学の研究グループが津波による被害の分析を進めたところ、犠牲者の9割近くがリアス海岸の沖合で発見されていたことが明らかとなりました。リアス海岸をもつ地域では津波により沖まで流されるリスクが高いといえ、救命胴衣を用意するなどの備えが必要です。
東北大学災害科学国際研究所の門廻充侍助教などの研究グループでは、宮城県警からの情報提供を受け、東日本大震災で死亡した被災者のうち9527名の調査を進めています。このうち、海でご遺体が発見された568名について分析したところ、リアス海岸になっている沖合での発見が全体の88%と、9割近くを占めることがわかりました。
リアス海岸は、起伏の多い山地が海に沈んでつくられた海岸です。山地だったころの谷の部分に海水が侵入して出来上がっているため、沿岸部の傾斜が急で複雑に入り組んだ地形になっています。こうしたリアス海岸の地形では、津波の遡上距離が短い上に、陸から海に流れる「引き波」の力が平野部に比べ3~5倍の強さになるため、より多くの人が巻き込まれたと考えられます。
今回の調査では、沖合でご遺体が発見された割合は震災で死亡した人のうち約6%にのぼります。リアス海岸の地域で生活する人々は、津波に巻き込まれて沖まで流されてしまうリスクが高いといえるでしょう。命を守るための救命胴衣(ライフジャケット)を備えるなど、突然の災害発生でも命を守るとっさの行動がとれる対策を検討しておきたいところです。
※リアス海岸とよく似た複雑な入江をもつ海岸に、フィヨルド(ノルウェー語の「入江」の意)があります。こちらは氷河による侵食で作られた深い谷が海に沈んで海岸になっており、両岸に断崖がそびえたつ入江が細長く、奥深く続くという違いがあります。
防災ログ事務局:南部優子