首都圏の大規模停電は必ず起きると心得よ|福島県沖地震 防災ニュース

2022年3月22日

3月22日 福島県沖で3月16日23時36分頃に発生し、最大震度6強を観測した地震では、大規模な停電が起きました。ピーク時の停電規模は東北電力管内で15万戸近く、東京電力管内で209万戸近くにのぼり、約3時間後に復電しました。東京23区をはじめとする首都圏の揺れは震度4でした。揺れそのものはそれほど大きくなかったにもかかわらず、なぜこのような大規模停電が発生したのでしょうか。

今回の停電の原因は、UFR(周波数低下リレー)装置が作動したためでした。UFRは、送電網の中を通る電力の周波数を観測し、急激な低下などの変化を検知すると自動的に送電を停止する安全装置で、各地の変電所に設置されています。

大規模な地震が発生すると、発電所の重要な設備が緊急停止します。多くの発電所が同時に停止すると電気の供給が急激に減ります。すると、利用する電気の量とのバランスが悪くなり、周波数の大幅な低下が起き、最悪の場合、電力会社の管内すべてが停電する「ブラックアウト」が起きてしまいます。

2018年9月に北海道胆振東部地震で発生したブラックアウトを覚えておられる方も多いのではないでしょうか。地震発生直後、北海道で最大の苫東厚真火力発電所をはじめ、各地の風力・水力発電所が相次いで停止しました。地震発生から約17分後、北海道全域にわたり、最大で300万戸近い大規模停電となったのです。復旧には約50時間、丸2日以上かかりました。

画像出典:東京電力パワーグリッド「需要と供給のバランスについて」より

 

今回の福島県沖の地震では、東北電力の原町火力発電所や東京電力に送電するJERAの広野火力発電所など、11カ所の火力発電所が緊急停止しました。約600万kWの供給力が一気に低下し、各地の変電所でUFRが作動しました。UFRが働くと、そこから先の送電エリアは停電するものの、公共性の高いインフラや行政機関など、重要な施設への送電は守られ、全域でのブラックアウトや送電網の損傷といった致命的なダメージを回避することができます。

東京電力パワーグリッドによると、地発生から約1時間後の17日0時37分から順次送電を再開し、約3.5時間後の2時52分には復旧しました。実は、2021年2月に発生した福島県沖の地震でもUFRによる停電が起きていました。6カ所の火力発電所が緊急停止し、約650万kWの供給力が喪失。UFRが作動して最大95万戸の停電が発生し、半日後にほぼ復旧していたのです。昨年の半日後から比べても、今回の地震では復電まで約3.5時間、発生した停電の規模が昨年の倍以上であったことから考えるとかなり改善されたようすが伺えます。

UFRは、震災直後に電話回線が重要な回線を守るために通信規制をかけるのと同様に、電力の周波数を安定させ供給の継続を守るための送電調整といえます。大規模な被害がなければ、順次バランスをとりながら送電を再開していくため、およそ3時間から半日程度で復旧することが多いとされます。ただし、被害が発生し復旧に時間がかかる発電所や送電施設があった場合、ちょっとした電力需要の増加でバランスが崩れてしまいます。今回の地震でいうと、18日夜、東京電力管内は、一部の火力発電所が復旧していない上に雨天による低気温により電力需要が増加したため、需給逼迫を訴え、節電を呼びかけました。

大規模な地震が発生した場合の停電や節電要請は必ず起きると考えておきましょう。モバイルバッテリーやポータブル電源などの非常電源を用意するほか、電力に頼らない代替手段なども含めたBCP対策の整備が必要です。

防災ログ事務局:南部優子


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