オフィスビルの防災対策|エレベーター閉じ込めのイメージをもとう 防災ニュース

2022年3月25日

3月25日 福島県沖で3月16日に発生した地震(最大震度6強)では、23時36分という深夜に発生したこともあり、エレベーターへの閉じ込め事故は41件と比較的小規模でした。しかし、これが始業・終業の時間帯であったらどうなっていたでしょうか。

通勤時間帯の大規模地震では、2018年6月18日午前7時58分に発生した大阪府北部地震が参考になります。最大震度6弱を観測した大規模災害で、朝の通勤時間帯を直撃しました。

この地震によりエレベーターの運行休止は、近畿2府3県(大阪府、京都府、兵庫県、滋賀県、奈良県)を中心に、和歌山県、三重県、愛知県、岐阜県、福井県、香川県と広い範囲で約6万3,000台にのぼりました。保守台数全体の32.1%にあたります。人身事故はなかったものの、運休休止したエレベーターのうち、近畿2府3県で346台の閉じ込めが発生しています。運転休止台数に対する割合は、大阪府が0.7%、京都府と兵庫県が0.3%、奈良県が0.2%、滋賀県が0.1%でした。

閉じ込めが発生した建物を用途別にみると、住宅が約58%と半数以上を占め、次いで事務所の約21%、商業施設の約8%が多くなっています。

画像出典:国土交通省「エレベーターの地震対策の取組みについて(報告)」より

 

閉じ込められてからの連絡について、著しい遅れはなかったものの、閉じ込められたエレベーター庫内やビルの管理人室からの通報が一般電話回線によるもので、輻輳でつながりにくくなったのが原因で遅れたケースもありました。

閉じ込められた人のうち、約87%は3時間以内に救出されています。3時間を超えてしまった原因としては、公共交通機関の停止や交通渋滞による現場への到着の遅れ、一般電話回線の輻輳による保守員への伝達の遅れなどが挙げられています。消防機関による救出は閉じ込め件数全体の約15%。保守員が到着するまで待っていたケースも10%以上ありました。

3月16日に発生した福島県沖の地震は深夜のことでもあり、閉じ込めが41件と比較的少なかったため他の救出へ与える影響も抑えられました。しかし、首都直下地震としてリスクが高いとされる東京湾北部地震の被害想定では、最大で約7,500件のエレベーター閉じ込め事故が発生するといわれています。これは、大坂北部地震の閉じ込め件数と単純に比較して22倍近くの影響が発生し、混乱の要素が大きくなる可能性があるといえるのです。

オフィスの防災対策としては、機器類の固定など危険対策、備蓄等による帰宅困難者対策、初期消火や避難誘導などがよくいわれます。これらはいずれも自社フロア内での行動です。エレベーターの閉じ込めに限らず、移動途中で地震に遭遇した場合の対応方法なども検討しておき、いざというときに落ち着いて対処できるように備えておきましょう。

防災ログ事務局:南部優子


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