【4月の災害】熊本地震 3.11からの取組みが痛みを伴いつつ検証された 防災ニュース

2022年4月18日

4月18日 4月の大地震として記憶に新しいのは、6年前、2016年に発生した熊本地震でしょう。熊本地震のいちばんの特徴が何度も続いた大きな揺れ。気象庁の震度階でもっとも大きい震度7の地震は、1回目が14日21時26分(マグニチュード6.5)、2回目が16日1時25分(マグニチュード7.3)と、わずか28時間の間に最大階級の揺れが同じ場所を襲ったのです。後から起きた地震のほうがマグニチュード(規模)の大きな地震で、1回目が前震、2回目が本震と認定されました。本震が後からきた地震も、初めての経験でした。

それ以外にも震度6強が2回、震度6弱が4回、震度5強が5回、震度5弱が14回と、大きな余震が続きます。2年後までに発生した最大震度1以上の有感地震は実に4,297回。震度計による観測が始まった1996年4月以来、最も多い回数でした。異例の地震活動により、気象庁が発表する防災情報のひとつである余震の発生確率は「過去の例があてあまらない」と発表をとりやめたほど、規模と頻度の予測がつかない内陸地震となりました。

一連の地震による被害は揺れによるものが多く、死亡した50名のうち、家屋倒壊によるのが37名、土砂災害が10名、火災が1名、塀の下敷きになったのが1名と、圧死が7割を超えました。さらに、相次ぐ揺れを警戒して建物内での避難をためらい、テントや車中泊を続ける被災者も多くいました。エコノミークラス症候群(静脈血栓塞栓症)で初の死者が出るなど、災害関連死と呼ばれる死亡者を含めると、犠牲となったのは276名。直接死の4倍以上の方が災害関連死となりました。

もうひとつ、熊本地震には大きな特徴があります。複合災害です。巨大な揺れが襲った地震発生からわずか2か月後、九州地方を豪雨が襲ったのです。九州地方は、前線の通過などに伴って積乱雲が群をなして発生し停滞する「線状降水帯」が起きやすいなど、しばしば豪雨災害に見舞われています。熊本地震が発生したのは4月中旬。大きな余震が何度も続く中、2か月後には梅雨の時期となってしまいました。6月19日から梅雨前線が活発化し、25日ごろまで約1週間、西日本を中心に九州から関東にかけ、死者7名、負傷者12名、住家被害291棟、床上・床下浸水2,535棟(消防庁調べ)と、広く被害が発生しました。また全国で513件の土砂災害(国土交通省調べ)も発生しています。

2011年に発生した東日本大震災(3.11)以来、「想定外をなくし強靭化を」とさまざまな取組みを進めていた矢先の熊本地震は、震度7の連続発生、度重なる余震の中の避難生活、豪雨との複合災害と新たな課題を眼前に突きつけました。一方で、国を挙げて行われてきた災害対策や社会の技術の進展により、少しずつ社会のレジリエンス(しなやかな強さ)の高まりもみられます。国や自治体の対策や法整備は以前にもご紹介しました。今回は、ICTの進展による通信手段の変化から大規模地震による影響をみてみましょう。

27年前の1995年の阪神・淡路大震災(1.17)では、最も普及していた固定電話は輻輳により使いものにならず、地上波放送のテレビも停電により利用困難で、情報はもっぱらラジオから得ていました。11年前の2011年の東日本大震災(3.11)では、普及が進んでいた携帯電話は、停電による停波や輻輳により利用できず、ワンセグ放送やSNSなど、インターネットの普及に伴う新しい形での情報収集がみられました。そして2016年の熊本地震では、スマートフォンをはじめとするモバイルデータ通信の普及、デジタル放送やデータ放送の浸透などにより、災害直後の情報収集が格段に早くなりました。速度だけではありません。音声以外の画像や動画など、大容量のデータ送信が可能となり、データ解析の機能も飛躍的に向上しています。初動対応に必要な状況把握・判断力は、日々新しい技術によってしなやかに強くなってきているのです。

図出典:情報通信白書 平成29年版 第1部第4節1「被災地域における情報伝達・情報共有とICTの役割」より

 

熊本地震から6年。ICTの世界は加速度的に進展しています。ツールが新しくなれば、かつては初動で不可能といわれていた対応でも、情報収集・判断を行い、実行していくことが可能となります。
みなさんの防災対策は、社会の歩みにあわせてしっかりアップデートしていますか?
技術の進歩を武器に災害への心構えを常に更新し、来るべき巨大災害に備えましょう。

 

防災ログ事務局:南部優子


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