誰ひとり取り残されない被災者支援に「災害ケースマネジメント」の普及を 防災ニュース

2022年5月30日

5月30日 在宅被災者など、災害で被害にあっているにもかかわらず、被災者再建支援の枠に入らないために支援を受けられない場合があります。大規模災害になるほど隙間に落ちてしまう人たちが増えることから、新しい支援の枠組みが構築されつつあります。「災害ケースマネジメント(DCM)」です。

災害ケースマネジメントは、内閣府では以下のように定義されています。
「被災者一人ひとりの被災状況や生活状況の課題等を個別の相談等により把握した上で、必要に応じ専門的な能力をもつ関係者と連携しながら、当該課題等の解消に向けて継続的に支援することにより、被災者の生活再建が進むようマネジメントする取組」(内閣府「災害ケースマネジメントに関する取組事例集(令和4年3月)」はじめに より)

簡単に説明すると、災害ケースマネジメントは、被害のある家で避難生活を続ける在宅被災者など、支援のとどきにくい被災者へ積極的に訪問などして相談にのることで「誰一人とりのこさない」災害復興支援です。一人ひとりの課題に応じた専門家が連携しながら計画をたて、再建支援を続けます。最終的には日常生活の延長にある社会保障や福祉の制度につなげるものです。

災害ケースマネジメントの発祥は、2005年のアメリカで起きたハリケーン・カトリーナからの復興支援だとされています。日本では、2011年の東日本大震災からの在宅被災者支援や仮設住宅入居者の支援などで活用され、2016年の熊本地震、鳥取県中部地震、2018年の西日本豪雨と、少しずつ広がっています。

こうした災害ケースマネジメントの広がりをふまえ、防災基本計画では2021年5月に取組みを推進する環境整備に関する記載が追加されました。そして全国の取組み状況を調査し、2022年3月に先進的事例がとりまとめられ、公開されています。

災害ケースマネジメントについては、今後全国の自治体の地域防災計画にも明記され、取組が進められるでしょう。現状では以下のような課題が残されており、その道は平坦ではありません。
・個別訪問や相談支援を行う人材と財源の確保
・多岐にわたる再建支援の関係者をつなぐ連携体制、普段からの顔の見える関係づくり
・支援関係者、市民の理解を促す周知、広報
・具体的な災害ケースマネジメントの手法、ノウハウの整備
・災害ケースマネジメントの理解とノウハウ取得のための訓練・研修

内閣府では、2022年度中に災害ケースマネジメントの標準的な取組方法や活用できる制度をまとめた手引書を作成します。また、被災情報と住民情報を連携させた被災者台帳をクラウド環境で構築し、災害ケースマネジメントに活用できるシステム「地方公共団体情報システム機構(J-LIS)」の運用を開始する予定です。

内閣府 災害ケースマネジメントに関する取組事例集(令和4年3月)
https://www.bousai.go.jp/taisaku/hisaisyagyousei/case/index.html

防災ログ事務局:南部優子


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