首都直下地震、10年ぶり被害想定を見直し|東京都 防災ニュース
2022年6月13日
6月13日 東京都が10年ぶりに被害想定を見直し、5月25日公表しました。前回の被害想定は2012年、東日本大震災の翌年でした。それから10年の間に実施したさまざまな防災力強化の取組の成果をふまえ、新たに被害想定を算出しています。また、シミュレーション結果をシナリオにしてイメージしやすくしたほか、皆が積極的に取組を進めた場合の減災効果を可視化するなど工夫をこらした内容となりました。今後のさまざまな防災対策への活用が期待されます。
新たな都の被害想定は、国の中央防災会議における見解や発生確率などを踏まえて設定されました。東京都の下は、海側には千島海溝、日本海溝、伊豆・小笠原海溝のある太平洋プレートと、相模トラフ、南海トラフ、南西諸島海溝のあるフィリピン海プレート、陸側には北米プレートとユーラシアプレートと、多くのプレートが複雑にぶつかりあっており、その影響で多くの種類の地震が想定されています。その中で今回被害量を算出したのは、次の地震です。
<M7クラスの首都直下地震>
・都心南部直下地震(M7.3)
・多摩東部直下地震(M7.3)
・立川断層帯地震(M7.4)
<M8~9クラスの海溝型地震>
・大正関東地震(M8クラス)
・南海トラフ巨大地震(M9クラス)
東日本大震災以降、東京都では耐震化、不燃化、意識啓発など様々な取組を進めてきました。その結果、今回の被害想定では一定の減災効果が現れています。都内に最大規模の被害が発生すると想定される都心南部直下地震(冬の夕方、風速8m/s発生時)の想定で、10年前の算出結果と比較してみましょう。
・建物被害(揺れ):約11.6万棟 ⇒ 約8.2万棟
・建物被害(火災):約18.8万棟 ⇒ 約11.2万棟
・死者: 約9,600人 ⇒ 約6,100人
・負傷者: 約14.7万人 ⇒ 約9.3万人
・避難者: 約339万人 ⇒ 約299万人
・帰宅困難者: 約517万人 ⇒ 約453万人
減災効果がみられたとはいえ、区部の6割が震度6強以上となり、300万人近い避難者、400万人を超える帰宅困難者など、大きな被害が起きるのは間違いありません。都の被害想定をしっかりと確認し、どのような影響が起きそうかを考えておく必要があります。
例に挙げた都心南部直下地震(M7.3)以外にも、地震ごとに被害想定が算出されています。また、海溝型地震は津波の想定もあります。地震の発生場所や時間帯、風力といった前提によって被害の様相が変わるため、自分の周りに最も大きく影響する地震がどれにあたるのか、最悪の状況を把握しておきましょう。
もうひとつ、活用したいものがあります。今回の都の被害想定では、具体的な災害のイメージがつきやすいよう、「災害シナリオ」が作成されました。災害発生直後から24時間程度のようす、3日、1週間、1か月と時系列で、次のような身の回りの状況がどのように変わっていくのか、表になって整理されています。
・インフラ、ライフラインの被害と復旧活動
・救出救助など応急対策活動
・避難所での避難生活
・自宅での避難生活
・帰宅困難者をとりまく状況
数値では示しきれない被災のようすが具体的に記載されています。被害想定の地図と一緒に災害状況の流れを確認することで、災害が発生した時にどのような行動をとるべきか、また被害を軽減するために今からできることは何かを検討しやすくなるでしょう。ぜひ活用してください。
さらに都では、これからの対策を進める目安として、防災・減災対策による被害軽減効果をグラフで示しています。
例えば、すべての建物が耐震化を1981年の基準まで進めると被害想定をさらに約6割軽減できます。出火防止対策をしっかり進めたら約7~9割の軽減、家具転倒防止対策を全員が進めたら約8割の軽減など、目標が可視化されています。今後の取組の推進や啓発に活用すると効果的です。
(出典:東京都 首都直下地震等による東京都の被害想定(令和4年5月25日公表)
https://www.bousai.metro.tokyo.lg.jp/taisaku/torikumi/1000902/1021571.html
防災ログ事務局:南部優子