静岡県熱海市の土石流災害を教訓に|県第三者委員会最終報告書 防災ニュース

2022年6月22日

6月22日 梅雨の長雨が甚大な被害をもたらした静岡県熱海市の土石流災害から1年近くがたとうとしています。土石流の起点となった盛土の造成をめぐる検証を行った県の第三者委員会がまとめた最終報告書では、最悪の事態を想定せずに造成した事業者、届け出内容に対して適切な措置をとらなかった行政の対応の連携不足などが指摘されています。

【熱海市の土砂災害】
7月3日午前10時半ごろ、長雨が続いた熱海市で土石流が発生。海岸部まで約2kmにわたって大量の土砂が流出しました。死者27人(直接死者26人、関連死者1人)、行方不明者1人と、甚大な被害になりました。
命が助かったものの、自宅が流されるなどして避難する人たちは500人を超えました。コロナ禍での感染症対策もあって、市指定の避難所では対応しきれず、市内のホテルが避難所先となり、対応に負われました。

今回の土砂災害は、長雨蓄積型の上に、不適切な盛土の造成が被害を大きくしたと指摘されています。この災害を契機に、国土交通省は、国土地理院のデジタル地図を活用した盛土の全国調査を行うと発表しました。2000年ごろまでのデータと2008年以降のデータを比較し、地形が変わっているところから標高の差分を抽出し、盛土の可能性がある箇所(標高差+5m以上)を関係省庁や自治体へ提供。違法な開発などを行っている箇所がないか、検証を求めています。

日本は国土の3分の2が森林で、そのうちの約4割が人工林です。全国のどこでも熱海市とよく似た地形や開発事情を抱えているといえ、同様の盛土の土地は全国に存在します。今回の土石流災害は、決して特殊な事業者・行政の話ではありません。
梅雨が本格的になってくるこの時期は、雨量が蓄積すればどこでも同じような災害が発生する可能性があります。土石流をはじめとする土砂災害は、災害が起きてしまってからでは逃げ切れません。事前に起きやすさを知っておき、雨量の状態をみて早めに区域から出る避難が不可欠です。

いますぐできる対処に、ハザードマップによる確認があります。土砂災害の危険度が高い箇所は「土砂災害警戒区域(イエロー/レッド)」として地図になっています。パソコンでもスマートフォンでも確認できます。
また、雨が続いた場合など、災害発生直前の情報では、気象庁が大雨の際の災害発生の危険度を地図上に示す危険度分布「キキクル」も活用しましょう。
※キキクルの記事
https://bousailog.com/news/20220606/

事前に危険性をイメージしておくからこそ、大雨などの気象情報が出たときの判断や避難のタイミングが適切になります。いのちをなくしては元も子もありません。行政の対応や民間の動きなど理由をつけて問題を先送りにせず、今自分たちにできることは何かをよく考え、備えていきましょう。

画像提供:国土交通省「盛土の可能性のある箇所の概略的な抽出について」より、基盤地図情報数値標高モデルと航空レーザ測量データの標高差分から地形変化可能性箇所を抽出したもの

 

防災ログ事務局:南部優子


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