九州・山口で初の線状降水帯予測/東北で記録的豪雨 総合的な確認を 防災ニュース

2022年7月19日

7月19日 梅雨末期のような大雨を受け、7月15日、豪雨災害の要因の一つとされる線状降水帯の予測が九州地方と山口県に出されました。運用開始以来初めての発表で、「危機感を高め、明るいうちに避難経路の確認や、住んでいる場所でどんな災害が発生しやすい状況になっているかをハザードマップで確認してほしい」との呼び掛けがありました。発表後、15日から16日午前にかけて大雨になりましたが、予測ほどには湿った空気が集中することなく、線状降水帯が発生したときに出される「顕著な大雨に関する情報」は発表されませんでした。

一方、7月18日の午後3時すぎに長崎県、19日0時台に山口県西部、2時台に福岡・筑豊・筑後地方、4時すぎに大分県北部・西部と、予測なしに線状降水帯が発生しています。

線状降水帯の正確な予測は難しく、的中率は全国での確率でも2回に1回程度、地方まで絞り込むと4回に1回程度といわれています。ただ、いったん発生すると甚大な被害となる可能性があり、線状降水帯に関する情報が発表されたときは、最悪を想定した備えが必要です。

そのほか、14日から16日にかけての大雨では、遠く離れた東北地方で大きな被害が発生しました。国土交通省の発表によると、7月17日現在、東北地方を中心に6推計12河川で氾濫や越水、10件の土砂災害が発生しました。土砂崩れや冠水により、宮城県で落橋の被害が発生したほか、各地で道路の通行止めや鉄道の運休などの影響が出ています。

気象災害は、地震などの突発的な事象に比べると予測の精度は上がってきているものの、大気の状況や地形などにより予測不可能な動きになる場合があります。線状降水帯の予測に限らず、全国の動きと自分の地域の気象情報をバランスよく収集し、土砂災害警戒情報をはじめとする危険度情報や自治体からの防災情報を確認して、早めの対策を心がけましょう。

【線状降水帯とは】
線状降水帯は、次々と発生する積乱雲が列をなして積乱雲群となり、数時間にわたりほぼ同じ場所に停滞あるいは通過していく雨域です。長さは50~300km、幅は20~50km程度と細帯状になって、同じような場所へ大量の雨が数時間にわたり降り注ぎ、河川の氾濫や土砂災害を引き起こします。線状降水帯は事前に予測することが困難とされてきましたが、産官学共同で観測の強化や研究機関と連携した予報モデルの開発を前倒しで進めており、第一段階として今回のような予報を開始したものです。

線状降水帯が発生した地域では急激に雨量が増えるおそれがあり、土砂災害や川の氾濫、低い土地の浸水を引き起こす可能性があります。線状降水帯では、大雨をもたらす積乱雲が同じような地域に次から次へと流れ込んでくる可能性があります。非常に激しい雨が長時間降り続き、降水量が急激に多くなって、災害発生の危険度が急激に高まるのが特徴です。

線状降水帯の中に入ってしまってからでは激しい雨で避難どころではなくなります。急激に変化する気象の場合は、今周辺が穏やかであったとしても急変しますから、日頃からハザードマップなどで浸水の可能性がどの程度予測されているかを確認し、避難ルートを考えておきましょう。そして線状降水帯の予測や各種の警報発表に注目し、いつ避難する場合でも慌てないよう、避難時に持ち出す物などの整備を進めましょう。

線状降水帯が発生し、大雨により地盤が緩んだり河川が増水したりすると、その後わずかな雨で災害が発生するおそれがあります。気象庁では、累積雨量も踏まえながら、災害の危険度分布(キキクル)なども発表しています。危険度分布は、大雨による影響を5段階の警戒レベルにし、地図上にメッシュで色分けして表示するもので、次の災害事象について避難など身を守る行動のタイミングを知らせてくれます。
・土砂キキクル:土砂災害の危険度
・浸水キキクル:浸水被害の危険度
・洪水キキクル:洪水の危険度

表出典:内閣府「避難情報に関するガイドライン(令和3年5月改定、令和4年6月更新)」より、警戒レベルの一覧表

 

防災ログ事務局:南部優子


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