水害に見舞われたときの対処法 熱中症対策も忘れずに 防災ニュース

2022年8月12日

8月12日 一度水害にあってしまうと元の生活に戻るまでには相当な時間がかかります。片付けや手続きなどが重なり心身が疲れ切ってしまうことも。その一方で、被災地へボランティアや支援団体などたくさんの人が駆けつけてくれますし、公的機関の支援制度もあります。浸水被害にあってからどのような対処をすればよいのか、大きな流れを知って、無理なく少しずつ、生活を取り戻していきましょう。特に、エアコンが使用できない中での対応では熱中症対策が不可欠です。体調管理に十分注意しながら進めてください。

【注意!】災害時の熱中症対策
感染症対策のため、マスク着用や三密回避によるコミュニケーションの減少から、災害対応時の体調不良を伝えづらくなりがちです。特に熱中症には十分気をつけましょう。水分・塩分を補給する、体を冷やすグッズや衣類で調整する、日除けを活用する、室温計や熱中症計を使用して環境状況をこまめにチェックするなど、感覚に頼らず具体的なツールで対策をとることが重要です。特に、マスクをつけていると、放熱が妨げられて体内に熱がこもる上、マスクをいちいち外すことが面倒になって水分補給が遅れがちです。高齢の方はもちろん、若い方もこれくらい大丈夫と過信せず、上記の熱中症対策を厳密に行うとともに、周囲の人たちが互いに声をかけあうことで、体調不良を見逃さないようにしましょう。

 

画像:日本気象協会 熱中症ゼロへ より、医師が教える災害時の熱中症対策

 

ここからは、水害に見舞われた時の対応を、次のステップで解説していきます。参考にしてください。

【1】まずは落ち着いて、状況把握と見通しを立てて仮住まいの場所を決めよう
【2】水害からの生活再建に必要な手続きをとろう
【3】片付けと掃除、家の修復に関する手続きのポイント

 

対処【1】まずは落ち着いて、状況把握と見通しを立てて仮住まいの場所を決めよう

 

■見通しを立てる
一度浸水してしまうと、再建までには軽い被害で1ヵ月、長い場合は1年以上もかかります。
このため、まずは落ち着いて、次のような点からどのくらい長引きそうかの見通しを立てましょう。
・浸水の規模:床下や壁裏まで十分乾燥させる必要がある(最低1ヵ月)
・土砂の量:かき出したり乾燥させたりするのに時間がかかる
・災害の規模:工務店や施工業者への依頼が殺到すると半年以上待たされることもある

 

■仮住まいの場所を決める
再建までにどのくらいかかりそうかによって、仮住まいの方法を決めましょう。
次の表を参考に、家族構成や経済事情を含めて検討しておきましょう。

 

災害救助法が適用された場合は、仮設住宅の設置などの公的支援制度を活用できるようになります。

 

■ボランティアを活用する
大きな災害の場合は、災害ボランティアセンターが設置されます。
片付けだけでなく、食事や洗濯、送迎、健康相談、足湯やマッサージなど、一般的な手伝いから専門的な支援までいろいろなサポートをしてくれますし、支援に関する最新情報を教えてくれたりするので、積極的に活用するとよいでしょう。

 

対処【2】水害からの生活再建に必要な手続きをとろう

 

■被害状況の写真を撮る
まず、自宅の被害の様子を写真に残しておきます。いろいろな角度で4方向から、人と一緒に撮って高さをわかりやすくしたり、内部の様子も撮ったりして、ひと目でわかるようにします。思っているより3倍くらい多めに撮っておきましょう。

図出典:手引きP16

 

■罹災(りさい)証明書/被災証明書を発行してもらう
手続きでいちばん重要なのが、公的に被害程度を証明する書類である「罹災証明書」です。罹災証明書を提示することで様々な支援制度を受けることができます。手続きの手順は下図のような流れになります。

図出典:手引き P8

 

実際の被害は、外観のほか、家の傾きや浸水深、家屋の部位(柱・床など)の損傷割合などにより認定を行います。目安としては下図を参考にしてください。手続きや被害認定の詳細はよく改正されます。内閣府「災害に係る住家の被害認定基準運用指針」を参考に、最新の情報を集めるようにしておきましょう。

図出典:手引き P10

 

■支援制度を活用する
罹災証明書が発行されると、被害認定に応じて次のような支援制度が活用できる可能性があります。
・住宅の応急修理制度
・被災者生活再建支援金
・義援金(全国からの寄付の配分)
・自治体からの見舞金
詳しい制度は内閣府「被災者支援に関する各種制度の概要」を参考にしてください。

■支払いの猶予や減免、控除などを申告する
被災すると公共料金や税金の支払いが先延ばしまたは減額・免除される場合があります。罹災証明書がなくても受けられる場合があるので、問い合わせてみるとよいでしょう。
・所得税、固定資産税、健康保険料、雑損控除(翌年の確定申告時)など
・上下水道代、電気代、ガス代、電話料金、NHK受信料など
・各種保険料など
・被災ローン減免など

■保険会社に連絡する
火災保険や共済、車両保険に加入している場合は、自然災害損保契約紹介センターなどの窓口に連絡してみましょう。

 

対処【3】片付け、掃除、家屋修復

 

罹災証明などの手続きのため、写真に記録を残した後、片付けを始めます。

図出典:手引き P15

 

■家具・家電を仕分ける
床上まで浸水して泥をかぶった場合、断水が回復した後すぐに作業できるよう、家具や家電を山分けしておきます。
・洗って消毒したら使えるもの:電気製品以外の小物、食器など
・専門家に相談するもの:車、電気製品、携帯電話やパソコン、現金や通用、アルバムなど
・処分するもの:水を吸った布団やカビが生えた衣類・家具など

図出典:手引き P19

 

■床下の水や泥を確認し、除去する
浸水した場合は面倒でも床下の作業をしましょう。一見問題がなさそうでも、泥や水がたまったままだとカビや悪臭が発生し、被害が拡大します。ボランティアや工務店などの力を借りながら床板を剥がして泥を掻き出すなど、早めに取り除くことをおすすめします。
・床下の状態を確認する
・水を抜いてから泥を掻き出す
・木の部分の泥を拭き取る

図出典:水害にあったときに(概要チラシ)

 

■乾燥・消毒する
泥を取り除いたら消毒し、しっかりと乾燥させます。床下の消毒には、逆性石けん(ベンザルコニウム塩化物)が代表的な消毒剤です。床や壁、天井などは、消毒用エタノール(80%溶液)をスプレーして乾燥させます。掃除をするときは、肌の露出を避け、目や喉を守る服装で作業しましょう。

図出典:水害にあったときに(概要チラシ)

 

<記事出典>
熱中症ゼロへ。医師が教える災害時の熱中症対策
https://www.netsuzero.jp/doctor-disaster

震災がつなぐ全国ネットワーク『水害にあったときに~浸水被害からの生活再建の手引き~』(冊子版)Web公開版(2021年7月)
https://blog.canpan.info/shintsuna/archive/1420

内閣府「災害に係る住家の被害認定基準運用指針」
http://www.bousai.go.jp/taisaku/pdf/h3003shishin_3.pdf
※基準や調査方法は随時見直し・更新されます。直近では2019年3月に改訂されました。常に最新を確認するとよいでしょう。

内閣府「被災者支援に関する各種制度の概要」
https://www.bousai.go.jp/kyoiku/pdf/kakusyuseido_tsuujou.pdf?fbclid=IwAR2nzZmFdn0ZkfRVQGPh5csFiTGvgbAurT_0dPBS4shPH8wGlOmd_i2qTGQ

「水害にあったときに」概要チラシ
http://blog.canpan.info/shintsuna/img/E6B0B4E5AEB3E381ABE38182E381A3E3819FE381A8E3818DE381AB_E38381E383A9E382B7E78988_E7ACAC4E78988201910_.pdf

 

防災ログ事務局:南部優子


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