海底火山の噴火による潮位上昇は「津波」に統一 気象庁 防災ニュース
8月21日 今年の正月明け(1月15日)に、トンガの沖合いで大規模な海底火山の噴火が発生し、それに伴って気圧波による津波のような潮位の上昇が起きました。この事象を受けて気象庁は、海底火山の噴火による気圧変化と潮位変化を観測した場合、「津波」の名称に統一して注意報や警報を発表する情報発信の運用を開始しました。
トンガの海底火山の噴火による潮位上昇をめぐっては、有識者による「火山噴火等による潮位変化に関する情報のあり方検討会」が検討を続けてきており、7月27日に報告書をまとめました。報告書によると、海底火山の噴火による気圧波による潮位の上昇は、一般的な海溝型地震による津波とは発生のメカニズムが異なるものの、今後は「津波」として名称を統一することとしています。また、情報発信の基準としては、通常の津波注意報発表(予測波高0.2m)に達しなくても津波注意報を発表し、警報は基準通り(予測波高1.0m)で発表するとしています(下図参照)。


今回のトンガの海底噴火のような大規模な噴火は、世界全体で年に4回程度発生しています。そのうち日本に影響を及ぼす津波が発生するのは200~300回に1回程度。単純に割れば50年~75年と、それほど頻度が高いわけではありませんが、このようなメカニズムで起きる津波もあることを理解し、備えておくことは重要です。
今後、海底噴火の調査手法や解析の技術も進展するでしょう。常に情報はアップデートし、今得られる情報から何ができるかを考えておきましょう。

衛星写真:1月15日、南太平洋トンガ沖の海底火山噴火の様子 気象庁提供・AP
<トンガの海底噴火>
1月15日午後5時10分(日本時間午後1時10分)、南太平洋の島国トンガの沖合で大規模な海底火山の噴火が発生。この影響による津波は、15日午後7時58分に小笠原諸島父島に第一波を観測し、11時55分に奄美大島小湊で1.2m、翌16日午前0時31分に和歌山県御坊市で30cm、午前2時26分に岩手県久慈港で1.1mと、トンガで発生した津波より高い津波高を観測しました。
気象庁は、当初トンガ周辺の津波高を分析し、被害のおそれはないとしていましたが、その後日本で観測された津波が予想より早く、また波の変化も想定より3~4倍高いものとなったため、深夜の16日午前0時15分に津波警報・注意報を発表しました。これにより、8県約22万9千人に避難指示が出され、多数の運休や欠航が発生。大学入学共通テスト開始時間の繰り下げ、中止などのほか、船舶の転覆や沖への流出、漁場の被害などの影響が出ました。
<記事参考>
火山噴火等による潮位変化に関する情報のあり方検討会 報告書
https://www.data.jma.go.jp/eqev/data/study-panel/tonga-kentoukai/tonga-kentoukai.html
防災ログ事務局:南部優子