ハザードマップ・リスクマップの読取り力を上げよう 防災ニュース

2022年9月22日

9月22日 近年、市区町村から各戸へ配布されるハザードマップなど、災害のリスク情報が地図で共有されるようになってきています。「このエリアは危険」など漠然とした表現で示されることも多く、危険とされる範囲から少しでも外れていると「うちの家はぎりぎり安全だから大丈夫」といった具合に、かえって災害への備えが整わないという事態もおきかねません。ハザードマップで示しているのは、あくまでも「特定の条件でシミュレーションした場合に起きる可能性の高さ」を示すものです。このため、ハザードマップを見るときは、単に自分の家や会社が範囲に入っているかどうかを「採点」するのでなく、どのような危険がどの程度、どんな場合に起きる可能性が高いと想定されているのかを確認し、対処法をイメージする活用が重要です。

<ハザードマップの主な確認ポイント>
・どんな災害事象か(外水氾濫/内水氾濫/高潮/土石流/がけ崩れ/地すべり/津波/震度/液状化など)
・根拠となる想定は何か(河川の名称/地震の名称など)
・その想定が発生する確率はどの程度か(10年/100年/1000年に1度など)

例えば、たいていのハザードマップの浸水想定は、一級河川など主要な河川で堤防決壊などの事象をシミュレーションしています。大きな河川には中小の河川が流れ込んでいますが、このひとつひとつについてのシミュレーションはできていないことが多いため、「浸水想定区域外」とされているエリアでも、大雨になれば一帯の河川の水位が上がるわけですから、河川と高さの変わらない低地では水が溢れてしまう可能性が高くなります。

また、災害想定のシミュレーションには、1000年に1度程度と頻度は少ないが被害が甚大となる「最大想定規模」と、10~100年に1度程度と発生確率が高い想定で予測した「計画規模」があります。どちらで想定されたものかを確認しておき、比較的よく起きるとされる範囲と、めったにないが最悪の範囲とを把握しておくとよいでしょう。

土砂災害でいうと、シミュレーションは人家のあるエリアを調査しているため、道路沿いに危険なエリアがあるのに奥の山中エリアは危険を示す色がつかないこともしばしばあります。これも、山中が土砂災害の「危険区域外」であるわけでなく、突然大規模な崩落が発生し、道路を寸断する可能性も大いに考えられるわけです。

実際の災害が発生する際には、ハザードマップの情報は災害が起きる「可能性の高さ」を示すものとしてイメージのベースにし、実際に起きている情報をリアルタイムで収集しながらリスクを判断していくことが重要です。土砂災害では7~8割、河川浸水では3~4割が、ハザードマップに示された「危険区域」またはその近くで災害を起こしているともいわれています。河川浸水の割合が低めに感じるかもしれませんが、中小河川のシミュレーションがマップに反映されていないことを考えると、低地の場合はいつどこで浸水被害に遭うかわからないという心構えが必要でしょう。

9月から10月にかけては、大雨や台風、土砂災害などの危険が特に高まる季節です。ハザードマップの読み取り能力を高め、いざというときに適切な判断ができるよう日頃から訓練しておきましょう。

画像出典:国土交通省 ハザードマップポータルサイト トップ画面

【参考情報】
国土交通省 ハザードマップポータルサイト
https://disaportal.gsi.go.jp/

防災ログ事務局:南部優子


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