在宅避難時のトイレ対策を考えておこう 防災ニュース

2022年11月30日

11月30日 積水ハウス株式会社が行った「自宅における防災に関する調査(2022年)」によると、避難所へ行くことに抵抗を感じるとの回答が74.6%と、およそ4人に3人が在宅避難の意向をもつことがわかりました。コロナ禍前の同調査では61.0%だったことから、プライバシーへと感染症の懸念から、在宅避難がこれからますます重要な避難方法となっていくことが考えられます。

在宅避難への備えとして第一に思い浮かぶのは、水や食料、バッテリーなどの備蓄でしょう。ここにもうひとつ、トイレの備蓄をぜひ加えていただきたいと考えます。日常では話題にしづらいかもしれませんが、飲食と同じくらい排泄は重要です。トイレに行くことをためらっていると、排泄の回数を減らすために水分を控え過ぎて脱水症状や熱中症になるなど、体調にも影響がでてしまいます。

NPOの日本トイレ研究所が実際に被災した人に対して行ったアンケートによると、災害発生後最初にトイレに行きたいと感じたのは、3時間以内が39%、6時間以内が34%でした。12時間以内までをあわせると92%と、ほとんどの人が半日ほどでトイレに行きたくなったと回答しています。

一方で、災害時のトイレはどのくらいで供給されるのでしょうか。

国土交通省「マンホールトイレ整備・運用のためのガイドライン」(2021年3月)より

国や自治体が用意する仮設トイレや車載トイレのような災害対応用トイレは、各機関が調達して被災地に運び込むまでに時間がかかります。東日本大震災のときは、避難所に仮設トイレが行き渡るまでの時間は3日以内が34%、1週間以内が17%でした。
現在はプッシュ型の支援といって、かなり対策が進んではいますが、それでも早くて24時間、災害の規模によると3日くらいかかるかもしれません。

避難所などにあらかじめ配備されている常設の仮設トイレやマンホールトイレなどもありますが、数が少なく、汲み取りが必要なタイプだとあっという間に使えなくなってしまいます。
つまり、災害発生直後にトイレに行きたくなっても、公的な支援は間に合わないのです。
災害時の排泄は、自分の分は自分でなんとかするつもりでいましょう。最低3日分、できれば1週間分くらいは、各自が備蓄した携帯トイレや簡易トイレでしのぐ必要があります。

ここでひとつ注意したいのが、水洗トイレの利用方法です。自宅がそれほど被災しなかった場合、見た目はトイレがそのまま使えそうに思えるかもしれません。そこで、風呂場にためておいた生活用水などを流して水洗でいつも通り使用したくなるかもしれませんが、揺れなどにより見えないところの配管が被災し、排水できなくなっていた場合、汚水を流すことができずに詰まってしまい、逆流してくる可能性があります。特にマンションなどでは、各戸の排水管がつながっており、上の階の住人の流した汚水が下層の住人のトイレから逆流することもあり、深刻なトラブルにつながります。

水洗トイレは、下水管を点検して被災状況が判明するまでは、水を流さないようにしましょう。トイレの室内が使えそうなら、携帯トイレを用い、便器にビニール袋をかぶせて吸水シートや凝固剤を中に入れるなどして利用し、汚物は流さず袋に詰めて処理することをおすすめします。

簡易トイレは、持ち運びできる小型のトイレで、トイレの便器も使えない場合に使用できます。携帯トイレの便袋をかぶせて使用するタイプや、機械式のものなどがあります。機械式は、電気が供給されないと使用できないタイプのものがあるため、注意が必要です。

日本トイレ協会によると、1日あたりの排泄回数は大人で5回くらいとされます。例えば4人家族で3日分だと 5回×4人×3日の60回分、1週間分だと 5回×4人×7日の140回分の用意が必要です。かなり多く感じるかもしれませんが、かなりコンパクトな箱におさまったものもありますし、長期保存できますから、まとまった数を備えておくと安心です。

地震だけではなく、大規模な浸水被害が発生した場合にも長期にわたって排水が困難になる場合があります。水や食料、充電機器とあわせて災害用のトイレも準備しておきましょう。

防災ログ事務局:南部優子


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