1662年の日向灘地震はM7.9の巨大地震だった可能性 防災ニュース
2023年2月22日
2月22日 京都大学などの研究グループが、日向灘で過去最大級の地震だったとされる1662年の地震が、従来推定されていたマグニチュードよりかなり大きく、エネルギーでいうと2.8倍に相当する巨大地震だった可能性があると発表しました。南海トラフで研究の進むスロー地震(プレート境界で発生する揺れに気づかない地震)の研究成果などを踏まえ、新たな断層モデルを設定し、調査したものです。
九州と四国の間に位置する日向灘にはフィリピン海プレートとユーラシアプレートの境界があります。駿河湾から東西に広くのびる南海トラフの西の端にあたり、繰り返し発生する大地震の影響を受けています。これまでの調査では、マグニチュード(M)7.0~7.5程度の地震の発生が高いとされていました。実災害では、1662年に発生したM7.6の地震が最大級とされていていました。
研究グループでは、近年わかってきた海底地震観測で得られたスロー地震の状況や人工地震波によるプレート境界の深さ情報などから新たな断層モデルを構築し、分析を進めたところ、この断層モデルから得られる1662年の地震の推定はM7.9となりました。これまで政府の地震調査研究推進本部が想定していたのはM7.6で、地震のエネルギー規模でいうと2.8倍に相当する巨大な大きさだったことがわかりました。
スロー地震とは、通常の地震より断層面がゆっくりとした速度でずれ動く現象を指します。南海トラフ沿いで特に研究が進んでおり、巨大地震の震源域は浅部と深部でスロー地震に取り囲まれていることがわかってきています。東日本大震災時には、地震発生時に断層が特に大きく滑った領域と、地震前にスロー地震が発生していた領域が重なっており、スロー地震の存在が後の巨大地震に影響を与えたのではないかとされています。
日向灘の地震は、今後30年以内にM7.6前後のプレート型地震が発生する確率が10%(平均間隔約200年)、一回り小さいM7.1前後の地震が発生する確率が70~80%(約20~27年)と、かなり高い確率を示しています。今回の研究成果により、最大級の地震が発生した場合、M7.6でおさまらない可能性が出てきました。今後の日向灘や南海トラフの長期評価に影響を与えるかもしれません。
日向灘を西端とし太平洋側に広く横たわる南海トラフは、震源域の違いにより、東海地震、東南海地震、南海地震などといくつかの地震にわかれています。過去には、1854年の安政東海地震と南海地震(32時間後)や、1944~46年の昭和東南海地震と南海地震(2年後)のように、連続して大規模地震が発生した例もあります。日向灘地震をきっかけとして南海トラフの別の震源域で後続の巨大地震が発生する可能性が十分考えられるのです。このような背景もあり、現在では、南海トラフの震源域周辺で発生した地震や、スロー地震の発生状況を踏まえて「南海トラフ地震臨時情報」が発表されることになっています。
プレート型地震は、繰り返し発生するため、少しずつ研究が進んで地震や津波発生のメカニズムが解明されてきています。とはいえ、列島の四方をプレート境界で囲まれた日本では、プレート内に蓄積されたエネルギーが影響して断層がずれ動く断層型の地震も起こりやすく、発生確率のランク分けに関係なく、いつでも、どこでも、巨大地震に見舞われる可能性があります。
地震は、起きてからでは対処が間に合いません。耐震補強や転倒防止など、いまできる備えをしっかりと行い、命を守りましょう。
【参考】
京都大学 1662年日向灘地震の新たな断層モデルを構築―地球物理学と地質学の検証に基づく初の成果―
https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research-news/2023-01-24
https://www.jishin.go.jp/evaluation/evaluation_summary/#kaiko_rank
防災ログ事務局:南部優子