「シングルボイス」が変わる?|気象業務法等の一部改正が閣議決定 防災ニュース

2023年3月20日

3月20日 防災に関する情報提供の取り組みの一環として、国や都道府県が発表する予報・警報の高度化や、民間事業者の参入による充実を図るため、「気象業務法及び水防法の一部を改正する法律案」が閣議決定されました。

近年の自然災害、特に気象災害の頻発化・激甚化を背景に、災害対応に必要な情報収集の充実化を図ることができるよう、国や都道府県による予報や警報の精度の高度化が求められています。また、国などの機関が行う予報を補完するための、局所的な予報のニーズも高まっています。気象の予報に関しては、「シングルボイス」といって、情報の発信源を気象庁ほかの国に単一化することにより、情報の信頼性を確保する必要がある観点から、これまで予報・警報は、国・都道府県の発表に限定されていました。

一方で、コンピュータ・シミュレーションによる解析技術など、ICT技術が大きく進展する中、民間事業者の中での予測技術も高度になってきています。こうした背景を踏まえ、今回の改正では、災害情報の高度化や詳細化、局所化といった、多様なニーズにきめ細かく応える予報の提供に向け、民間の事業者が参入しやすくするための制度の整備が行われます。

具体的には、土砂崩れ・高潮・波浪・洪水の予報業務について、最新技術に基づく予測手法の導入により予報の精度向上を図るため、許可基準を新設します。これにより、改正後は、気象予報士の設置が必要なのは気象のみとなり、地震動、火山現象、土砂崩れ、津波、高潮、波浪、洪水に関し、技術上の基準に適合すれば、民間事業者による予報が可能となります。また、予報業務に用いることのできる気象測器の拡充として、気象庁長官の確認を受けた場合、検定済みの測器の観測値を主にしつつ、簡易センサーなど検定済みでないものも補完的に利用して予報することが可能となります。

情報の出どころが確かなところでないことによる混乱は問題ですが、一方で、解析や通信技術の進展は加速度的に高度化しています。国内で情報を統制したつもりでも、海外の解析情報が簡単に入手できる昨今、情報の発信源を厳密なひとつに絞る「シングルボイス」のあり方が変わってきているのかもしれません。災害時は情報がなにより重要な手がかりになるからと、つい最新情報に飛びついてしまいがちですが、その情報がどこから発信されたものか、信頼できる解析結果に基づくものか、本当に最新の情報なのかといった、情報を見極める「ファクトチェック」が不可欠です。

今回の改正は、情報をむやみに統制するのではなく、信頼できる高度な技術を平常時から取り入れて情報の精度を上げ、緊急時に頼れる情報源を増やしていこうとする試みともいえるでしょう。情報を利活用する側のリテラシーがさらに問われる時代になってきているともいえそうです。

出典:国土交通省「気象業務法及び水防法の一部を改正する法律案」を閣議決定 概要より


https://www.mlit.go.jp/report/press/mizukokudo02_hh_000032.html

防災ログ事務局:南部優子


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