大阪北部地震 朝の通勤時間帯に発生し都市部特有の課題が顕著に 防災ニュース

2023年6月19日

<6月19日> いまから5年前の6月18日、大阪府北部で最大震度6弱を観測する強い地震が発生し、朝の通勤時間帯だったこともあって、終日交通が麻痺するなど都市空間のリスクが浮き彫りになりました。

大阪府北部地震は、2018(平成30)年6月18日午前7時58分に発生、マグニチュード6.1の規模で、大阪市から大阪府北部にかけて最大震度6弱、大阪府、京都府、滋賀県、兵庫県、奈良県の一部で震度5弱以上を観測しました。

この地震による死者は6名で、うち2名はブロック塀が崩れたことによる被災でした。住家被害は全壊21棟、半壊454棟、一部損壊約5.7万棟で、停電は最大で約17万戸になりました。人的被害や建物被害の数字でみるとそれほど大きな地震のように感じられないかもしれませんが、この地震で最も深刻な影響が出たのは都市交通でした。

都市部では、交通の柱となるのは大量輸送が可能な鉄道です。地震で鉄道が運行停止となった場合は、安全確認の点検を行った上で順次再開となるのですが、突然止まった車両に残された多数の乗客が避難するまでに相当時間がかかった上、異なる鉄道会社の相互乗り入れが進んでいることから、点検が終わった区間でもすぐに運行再開させるのが困難となるなど、路線などの被害が少なかったにもかかわらず運休が長引いてしまいました。

すべての電車が線路上で突然止まったことから、遮断器が降りたままの状態になってしまい、線路で生活道路が封鎖された状態になってしまったほか、鉄道の運行停止に伴って自家用車に切り替えて出社する車両や、通行止めになった高速道路から流入してきた車両によって交通渋滞が平時と比べて最大で約7倍もの規模となり、解消までに14時間もかかりました。

近年は耐震補強対策が進んでいることもあり、震度6弱程度の場合、壊滅的なダメージを受ける建築物などはそれほど多くはないでしょう。一方で、都市部でこのクラスの地震が発生すると、なんとかして出社しなければならないと考えた通勤者(出勤困難者・帰宅困難者)が自家用車やタクシーを使ったり、歩道からあふれて歩きだしたりして道路が渋滞することにより、緊急的な救急やライフライン復旧などの災害従事車両が通行できなくなるなどの影響が出ることも考えられます。

現に、大阪北部地震でも、エレベーターの閉じ込めからの救出に駆けつける保守員の到着が渋滞などの原因で遅れたため最大で5時間以上もかかったケースがありました(平均は80分)。

地震は予告なくやってきます。都市部では災害時にがんばって出社したり帰宅したりすることがむしろ二次災害を引き起こし、都市全体の災害からの復旧を遅らせることがあると肝に銘じましょう。どうしても出社しなければならない業態と自宅待機させる業態とを分けて安全確保するなどの企業ルールを決めておき、災害発生時の情報共有方法や自宅待機時のテレワークを整備する、帰宅抑制のための社内備蓄を整備するなどの備えが重要です。

防災ログ事務局:南部優子


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