トイレの備え、してますか? 防災ニュース

2023年9月11日

<9月11日投稿>防災月間の9月は、災害対策を見直す絶好の機会ともいえます。特に備蓄は、消費期限や使用期限のチェックをして入れ替えたり、使い方を確認したりするタイミングとして最適です。備蓄品では、大規模な災害への対策として、飲料水や食料、充電器やカセットコンロといった、いのちをつなぐためのものとして食やインフラに関するものを備えておられる人は多くおられるはずです。一方、排泄に必要なトイレ対策はどうでしょうか。

NPO法人日本トイレ研究所が全国の自治体を対象に行ったアンケートによると、災害時のトイレ確保・管理計画を策定していると回答したのは24.1%でした(日本トイレ協会「災害時のトイレの備えに関するアンケート調査」)。災害時のトイレ確保・管理計画は、「避難所におけるトイレの確保・管理ガイドライン」で策定を促しているものなのですが、実際に計画を立てて備えている自治体は4分の1にも満たないことがわかります。さらには、自治体で備蓄している災害用トイレが最大級の災害時に「足りる見込み」だと回答したのは30.7%と、3分の1に届きませんでした。7割以上の自治体が、最悪のケースになった場合に災害用トイレが「不足する」もしくは「わからない」と回答しています。
ここからは、南海トラフ地震、首都直下地震をはじめとする巨大災害が発生した場合、トイレの備蓄が圧倒的に不足し、被災生活に支障がでるおそれがあることがみてとれます。

排泄に関することは話題にしづらいかもしれませんが、飲食と同じくらい重要です。トイレに行くことをためらっていると、排泄の回数を減らすために水分を控え過ぎて脱水症状や熱中症になるなど、体調にも影響がでてしまいます。長期化すると、処理しきれない汚物があふれて不衛生な環境になり、公衆衛生上も重大な問題が発生してきます。

日本トイレ研究所が実際に被災した人に対して行った調査によると、災害発生後最初にトイレに行きたいと感じたのは、3時間以内が39%、6時間以内が34%でした。12時間以内までをあわせると92%と、ほとんどの人が半日ほどでトイレに行きたくなったと回答しています(日本トイレ研究所「東日本大震災3.11のトイレ|現場の声から学ぶ」)。

このように、被災直後から重要なトイレですが、災害発生からどのくらいで供給されるのでしょうか。大規模地震災害を例に、時間経過に合わせてどのようなトイレが必要になるかをまとめた図でみていきましょう。(国土交通省「マンホールトイレ整備・運用のためのガイドライン」(2021年3月)より)

画像出典:国土交通省「マンホールトイレ整備・運用のためのガイドライン」2016年3月

国や自治体が用意する仮設トイレや車載トイレのような災害対応用トイレは、各機関が調達して被災地に運び込むまでに時間がかかります。東日本大震災のときは、避難所に仮設トイレが行き渡るまでの時間は3日以内が34%、1週間以内が17%でした。現在はプッシュ型の支援といって、かなり対策が進んではいますが、それでも早くて24時間、災害の規模によると3日くらいかかるかもしれません。

避難所などにあらかじめ配備されている常設の仮設トイレやマンホールトイレなどもありますが、数が少なく、汲み取りが必要なタイプだとあっという間に使えなくなってしまいます。つまり、災害発生直後にトイレに行きたくなっても、公的な支援は間に合わないのです。

災害時の排泄は、自分の分は自分でなんとかするつもりでいましょう。最低3日分、できれば1週間分くらいは、各自が備蓄した携帯トイレや簡易トイレでしのぐ必要があります。
携帯トイレは、自宅の洋式便器などにかぶせて設置するなどして使用する便袋です。吸水シートのタイプや凝固剤タイプなどがあります。簡易トイレは、持ち運びできる小型のトイレで、トイレの便器も使えない場合に使用できます。携帯トイレの便袋をかぶせて使用するタイプや、機械式のものなどがあります。機械式は、電気が供給されないと使用できないタイプのものがあるため、注意が必要です。

日本トイレ協会によると、1日あたりの排泄回数は大人で5回くらいとされます。例えば4人家族で3日分だと 5回×4人×3日の60回分、1週間分だと 5回×4人×7日の140回分の用意が必要です。かなり多く感じるかもしれませんが、かなりコンパクトな箱におさまったものもありますし、長期保存できますから、まとまった数を備えておくと安心です。

排水に困るのは地震だけではありません。大規模な浸水被害が発生した場合にも長期にわたって排水が困難になる場合があります。感染症対策で自宅避難を考えている人もおられると思います。水や食料、充電機器とあわせて災害用のトイレも準備しておきましょう。

防災ログ事務局:南部優子


関連ニュース