液状化で死者が発生したスラウェシ島地震(9月の災害) 防災ニュース

2023年9月28日

<9/28投稿>今からちょうど5年前の2018年9月28日、インドネシアのスラウェシ島で大規模な地震・津波災害が発生しました。この地震は陸域を震源とし活断層のずれにより起きたものですが、液状化現象による地盤崩壊で多数の死者が発生した世界でも例をみない災害です。同時に発生した津波災害も、沖合ではなく沿岸部の陸域で起きた土砂災害が海に流れ込んで海面が盛り上がって起きる「地すべり津波」でした。

この地震は、2018年9月28日(金)18時2分(現地時間)に、インドネシア スラウェシ島で地震が発生しました。震源はスラウェシ島中部の内陸で、地震の規模を示すモーメントマグニチュード(Mw)は7.5。日本の震度でいうと震度6強から7という非常に大きな揺れを観測しました。この地震の揺れ、津波、液状化による地盤流動により、死者・行方不明者4,340人、負傷者4,438人、避難者17万2,635人、家屋被害6万8,451棟と、甚大な被害が発生しています。

この地震で特徴的だったのが液状化です。液状化とは、地面の下を流れる地下水が地震の揺れで大きく上昇し、上部の地盤を液体のようにしてしまう現象で、日本でも住宅が傾くなどの被害が発生しています。ただ、死者が出るほどの被害になったことはありません。このスラウェシ島地震では、液状化による地盤の崩壊が広範囲にわたって発生し、崩れた地盤は大規模な土砂災害となり、ゆるやかな傾斜地を流れ下っていきました。幅が約1km、長さが約3kmにも及んだといわれています。土砂の波にのみ込まれ、住宅が流されながら倒壊したり、他の建物に押しつぶされたりし、膨大な生き埋め被害をもたらしました。

また、沿岸部では、沿岸部の陸域から海底につながって大規模な地すべりが発生し、大量の土砂が崩れ落ちて海底が盛り上がり、津波を引き起こしました。浸水は深いところで3~4mに達したといわれ、沿岸部の市街地をのみ込みました。地すべりによる津波は、頻度は低いものの日本でも発生しています。沖合いで発生する津波と異なり、あっという間に襲来するため、津波警報が間に合わないおそれもある、対処の難しい津波です。

インドネシアは、環太平洋火山帯に位置し、多くの火山があり、3つの大陸プレートが衝突していることから、世界でも有数の地震が活発な地域です。インドネシアでは、泥に吸い込まれる/地面に落ちるという意味のNalodo(ナロド)という言葉があり、伝承により1980年代くらい前までは、NalodoにつながるNalonjo(ナロンジョ)と呼ばれる湿地や泥地には家を立てたり営業したりしてきませんでした。ところが、近年の都市開発により、こうした伝承を知らずに移り住んできた人々が液状化の可能性の高い土地に定住するようになり、被害を大きくしたといわれています。

スラウェシ島の被害は特殊だったかもしれません。でも、プレートがぶつかるところにできた日本列島も、今後どのような地震が発生するか、誰にもわからないのです。各自治体のハザードマップでは、揺れの規模や液状化の可能性など、さまざまなデータが公表されています。自分たちの地域にどのようなリスクがあるのか、こうした災害を思い起こすたびに、新たな気持ちで確かめておくようにしましょう。

画像出典:JICA「切れ目のない復興支援を! インドネシア」より中部スラウェシ島地震のようす。写真:吉田亮人

防災ログ事務局:南部優子


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