ほぼ半世紀ぶりに名前のついた令和の台風 東日本台風・房総半島台風 防災ニュース

2023年10月16日

<10/16投稿>台風の名称は、通常は発生年と号数で表しますが、顕著な災害をもたらした災害で後世に経験や教訓を伝承することなどを目的に、気象庁が命名するものがあります。目安として、損壊家屋等1,000棟程度以上または浸水家屋10,000棟程度以上の家屋被害、相当の人的被害などの顕著な被害が発生し、かつ後世への伝承の観点から特に名称を定める必要があると認められる場合とされています。2019年は、「東日本台風」と呼ばれる10月の台風19号と、「房総半島台風」と呼ばれる9月の台風15号が、実に42年ぶりに名称がつけられたほど、特徴的な台風被害に見舞われた年でした。

【東日本台風(令和元年台風19号)】
この台風は、記録的な大雨をもたらしました。12日19時前に大型で強い勢力の状態で伊豆半島に上陸し、その後巻頭地方を通過していきました。10日から13日までの総降水量が、神奈川県箱根で1000ミリに達し、東日本を中心に17地点で500ミリを超え、特に静岡県や新潟県、関東甲信地方、東北地方の多くの地点で3、6、12、24時間降水量の観測史上1位の値を更新。6時間降水量は89地点、12時間降水量は120地点、24時間降水量は103地点、48時間降水量は72地点で観測史上1位を更新しています。

この台風により、1都12県309市区町村に大雨特別警報が発表され、国・県の管理河川で140箇所が決壊するなど、広範囲で被害が発生しました。この台風からわずか10日後の24日から26にかけて低気圧が同じようなコースをたどり、関東地方から東北地方の太平洋側を中心に大雨をもたらしたこともあり、死者104名(うち災害関連死7名)、行方不明者3名、重軽傷者374名と、多数の被災者が発生しました。

避難をしなかったり避難が遅れたりして被災した例や、屋外移動中に被災したり、高齢者が被災したりする例もまだ多く残っています。一方で都市部では、避難所が満員で入りきれないという事態になったところもありました。避難所での生活については、特に女性への配慮不足も課題となりました。

また、国や都・県が管理する大きな河川に流入する小さな河川の排水が追いつかず、広範囲でない氾濫が発生し、駅の水没や、タワーマンションの電源設備が浸水して1週間以上停電が続き、水を組み上げるポンプも稼働できないため断水にも影響して、多数のマンションの住民に影響を与えた例もありました。その他にも、通電火災や大量の災害ゴミの発生、屋根の応急修理に必要なブルーシートを張り替える職人不足による復旧の遅れや修理詐欺などのトラブルの発生など、都市部での台風災害のリスクが浮きぼりになりました。

【房総半島台風(令和元年台風15号)】
この台風は、コンパクトながら猛烈な暴風をもたらした台風でした。9月7日(土)から8日(日)にかけて小笠原近海から伊豆諸島付近を北上、9日(月)の明け方ごろ強い勢力のまま東京湾を進み、5時前に千葉市付近に上陸した後、茨城県沖に抜けました。台風の接近・通過に伴い、伊豆諸島や関東地方の南部を中心に猛烈な風雨となりました。特に、千葉市で最大風速35.9m、最大瞬間風速57.5mを観測するなど、多くの地点で観測史上1位の最大風速や最大瞬間風速を観測する記録的な暴風となりました。

台風第15号は、暴風域はさほど大きくならず、一方で観測史上最大の暴風を記録するほどの強い勢力をもっていました。日本列島への接近が週末にかかり、上陸が月曜日の明け方ごろになったことから、気象庁や交通機関の計画運休情報をもとに勤務に関する状況判断を行う企業側の体制が整わず、駅までの道に長蛇の列をつくる通勤者で混雑しました。また、台風通過後空港を再開させた際、連絡する鉄道が運休していたため空港から乗客が出られず、孤立して夜を明かす混乱も生じました。

最大級の暴風雨による停電や断水等のライフライン途絶は、都市部の脆弱性を浮き彫りにしました。特に千葉県の被害がひどく、台風後に猛暑が襲う中、停電の長期化によるエアコン機能不全と水不足による熱中症による被害が深刻な問題となっています。ほかにも停電の長期化による被害は、通信回線やテレビ回線の停波、冷却・冷凍設備の機能不全による店舗の閉鎖、病院の機能停止による透析患者の受け入れ問題など、台風通過直後だけでなく長期にわたり、生活のあらゆる面で大きな影響が生じています。

画像出典:防衛庁 自衛隊活動情報より

防災ログ事務局:南部優子


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