地震の確率、信じていいの? 防災ニュース

2023年12月4日

<12月4日投稿>日本文学振興会主催の第71回菊池寛賞のなかで南海トラフ地震に関する報道が取り上げられました。菊池寛賞は、文芸ほか様々な文化活動で業績を認めた個人や団体を表彰するもので、南海トラフ地震の発生確率がどのような経緯で検討・発表されていくかを丹念に追った書籍が評価されました。

地震は、台風など気象情報と異なり、前触れなく発生します。このメカニズムを解明しようと、様々な専門分野において、科学技術を駆使し、調査や観測、発生予測や被害想定などの研究が進められてきました。例えば、国では、100年といった長期的な地震発生の可能性や今後30年以内に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率を算出し公表しています。

とはいえ、地震発生の確率は「起きるかもしれない」ことの確からしさを表したものに過ぎません。数値が高ければ必ず起きるわけでもなく、逆に数値が低ければ地震が発生しないわけでもないのです。現に、熊本地震をはじめ多くの地震が、それほど注目されてこなかった場所で起きています。

具体的な数値でみると、海溝型地震の場合、数十年から数百年という間隔で繰り返し発生するため、地震の発生確率は年を追うごとに上がります。東日本大震災が発生する前、宮城県沖でマグニチュードM7.5程度の地震が発生する確率は10年以内に60%、30年以内に99%でした。活断層の場合は数千年単位の間隔で発生するとされ、今後30年以内に震度6弱以上の地震が発生する確率にすると0.1%未満となるものが多いのですが、これは、発生期間には大きな幅があるため、「いつ起きるかわからない」という話であり、めったに起きないから安全という意味ではありません。

地震以外の危険に遭遇する確率と比較すると、今後30年以内に、交通事故で負傷する確率は24%、火災で被災する確率は1.9%、大雨で被災する確率は0.5%。身近に起きやすいと感じている危険でもその程度です。地震の揺れに見舞われる確率を表した地震動予測地図は、0.1~3%で「やや高い」とされ、26%以上が最も濃く色分けされています。先に挙げた身近な危険と重ねてイメージしてみるとよさそうです。

災害は「正しく恐れる」ことが大事だとよく言われますが、この「正しさ」は、絶対に安全、あるいは絶対にリスクが発生するといった確実さを示すものではないのです。科学はどんなに進んでも完全ではなく、現時点での専門知識を集結したアウトプットとしての想定であり、備えの目安に過ぎません。根拠なく怖がったり、目を背けたりすることなく、いつ起きても冷静に行動できるようにすることが防災活動の基本です。

特に日本の場合、列島のどの場所においても「地震はいつでも身近に起きるもの」と考えましょう。そのうえで、住まいや職場などが地震の揺れや津波に対してどの程度の耐性をもっているのか、また突然起きたときにすぐに身を守ることができるかをチェックし、備えておくことが重要です。

[地震動予測地図WEBサイト]
県別・海溝型・活断層を選択して地震情報をみることができます。
https://www.jishin.go.jp/regional_seismicity/

[地震ハザードステーション]
地震の種類・揺れの強さ・確率・期間などの条件を設定して検索できます。
https://www.j-shis.bosai.go.jp/

画像出典:内閣府広報誌「ぼうさい」平成21年度版 特集 地震を知って地震に備える!より


https://www.bousai.go.jp/kohou/kouhoubousai/h21/05/special_03.html

防災ログ事務局:南部優子


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