30年目を迎えた1.17阪神・淡路大震災 教訓は活かせたのか 防災ニュース

2024年1月16日

<1月16日投稿>年明けの元日に発生した能登半島地震から2週間がたちました。14日時点で死者221人が確認され、いまなお24人の行方不明者の救助・捜索活動が続けられています。孤立地区は少なくとも15を数え、500人近くが取り残されています。2万人近くが身を寄せる避難所のほとんどで断水や停電が続き、寒さもあって今後の災害関連死が懸念されています。

災害の全容はまだ見えないものの、速報されている状況からは、能登半島地震では、激しい揺れからの建物倒壊による圧死や大規模(延焼)火災による焼死が多く見られています。また、富山湾で海底地すべりが発生し、地震からわずか3分後に津波の第一波が観測されており、まさに三重苦の災害でした。さらには土砂災害や雪で交通が止められてしまい、物資も人手も大幅に不足する状態が続いています。

日本は地震・風水害・土砂災害と、毎年のように発生する災害を教訓に、少しずつ防災体制を整えてきました。大規模地震災害では、阪神・淡路大震災から後、東日本大震災や熊本地震などの大きな災害を経験するたびに、耐災性を高め、初動体制を強化してきています。しかし、今回の能登半島地震では、半島の一角で発生した元日の地震がもたらした影響を把握するまでに相当の時間がかかっており、地震発生から2週間たった今でも支援の手が足りず、もどかしさが募ります。少子高齢化・過疎化が進む沿岸部や山間部など地方の課題や「被害が甚大な地域ほど情報を出せない」ことからの初動の難しさが浮き彫りになったといえるかもしれません。

今回の能登半島地震と同様の1月の震災で、大規模な立て建物倒壊と延焼火災が発生したのが阪神・淡路大震災です。今年で30年目に入ろうとするこの災害は、それまで台風など風水害を中心に進められがちだった防災対策に大きな課題をつきつけました。

[阪神・淡路大震災]
1995(平成7)年1月17日午前5時46分。まだ暗い明け方に突然襲った地震は、神戸市内とその周辺の市、淡路島を中心にマグニチュード7.3を観測し、神戸市で震度7になるなど、巨大な災害になりました。この地震による被害は、死者6,434名、行方不明者3名、負傷者43,792名。住家全壊約10万5,000棟、半壊約14万4,000棟に上りました。死因の多くは、建物の倒壊による圧死(83%)と大規模火災による焼死(13%)です。都市部の木密住宅地での耐震・耐火の重要性が改めて浮き彫りになり、この後の建築基準法の改正につながりました。

阪神・淡路大震災をきっかけにして、それまで風水害対策が中心だった災害対策が大きく見直される転換点となりました。先述したきっかけも含め、この地震後に始められたものが多くあります。
・地震の長期評価、地震動予測地図の発表
・自動的に震度を推定する計測震度の導入、全国の自治体への計測震度計の整備
・建築物の耐震性能強化に関する法律の整備、建築基準法の耐震基準の改訂
・被災建築物の応急危険度判定、罹災証明のための住家の被害認定調査の体制整備
・ボランティア活動促進のため、特定非営利活動団体の法人化(NPO法人の制定)

また、国や自治体も地震対策の制度や体制を見直しました。地域防災計画に地震編が加わり、対応が強化されるようになったのも、この地震がきっかけでした。地元の消防など行政だけでは到底対応しきれない大規模災害の実態をふまえ、地域コミュニティや企業など、「自助」「共助」「公助」による支え合いの重要性がクローズアップされるようになりました。

地震発生から30年目に入るまで月日は流れました。街の中では、激震の被害の痕跡は薄れ、復興が完了したように見えるかもしれません。しかし、兵庫県と被災12市には、まだ阪神・淡路大震災関連の地方債が残り、いまもなお返済が続いています。完済にはまだ10年以上かかる見通しです。

甚大な被害をもたらす災害は、一度発生すると数十年という長い年月にわたり、被災地へさまざまな形で大きな影響を及ぼし続けます。阪神・淡路大震災は記録と対応の検証がさまざまな機関で行われ、公開されている情報がたくさんあります。能登半島地震が示す意味は、これからの行動にかかっています。社会は動き続けます。次にいつどこで、そんな災害が襲ってくるかは誰にもわかりません。あなたはどのような災害を想定し、備えていますか?貴重な実災害の教訓を踏まえ、いま一度周囲の対策を棚卸ししてみてはいかがでしょうか。

<阪神・淡路大震災の代表的なアーカイブ>

●内閣府防災 阪神・淡路大震災教訓情報資料集(フェーズごとに対応の教訓が掲載されている)
http://www.bousai.go.jp/kyoiku/kyokun/hanshin_awaji/data/index.html

●内閣府防災 阪神・淡路大震災 総括・検証 調査シート(初動・応急・復旧対応の検証)
http://www.bousai.go.jp/kensho-hanshinawaji/chosa/index.htm

●神戸市 阪神・淡路大震災「1.17の記録」
http://kobe117shinsai.jp/

●神戸大学附属図書館 デジタルアーカイブ 震災文庫
(※2022年8月にリニューアルされ、URLが以前と変更されています)
https://da.lib.kobe-u.ac.jp/da/eqb/

●NHK 阪神・淡路大震災特集サイト
https://www.nhk.or.jp/kobe/shinsai/

●神戸新聞社 【特集】阪神・淡路大震災
https://www.kobe-np.co.jp/rentoku/sinsai/

防災ログ事務局:南部優子


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