二次避難について、考えておこう(能登半島地震続報) 防災ニュース

2024年1月30日

<1月30日投稿>能登半島地震の発生から29日で4週間が経ちました。依然として活発な地震活動が続く中、厳しい寒さもあいまって、復旧作業にも時間がかかり、過酷な避難生活が続いています。被災者の暮らしを身の安全と経済の両面から支えようと、政府は「被災者の生活と生業(なりわい)支援のためのパッケージ」を発表し、取り組みを進めています。一方、生命と健康を守るため、安全な場所への二次避難の取り組みでは、移動をためらったり、希望したのに断念したり、移動したのに避難所へ戻ってきたりする被災者がいて、避難のあり方に関する課題も見えてきています。

内閣府が26日にまとめた被害報によると、現在は次のような状況が確認されています。
・地震:最大震度7(志賀町) 1/1 16:06以降、震度1以上を観測した地震は1,516回
・火災:16件(うち石油コンビナート等特別防災区域内1件)
・人的被害:死者236名、重軽傷者1,285名 ※確認中いまだ多数
・住家被害:全半壊、一部損壊、床上・床下浸水等 17,130棟 ※確認中いまだ多数
・避難状況:避難所460箇所、避難者14,588名
・ライフライン:断水約4.5万戸、停電約3,700戸、通信 固定約890回線ほか一部エリアに支障
・通行止:高速道路1区間、直轄国道1区間、補助国道14区間、県道65区間
・鉄道:運転見合わせ2路線(のと鉄道は被害大きく運転再開の見込みなし)

この状況に対し、政府は25日、先が見えない現地の被災者の不安に応え、再び平安な生活を取り戻すことができるよう、緊急に対応すべき施策を「被災者と生業(なりわい)支援のためのパッケージ」としてとりまとめ、以下のような項目で緊急対策を行い、支援を強化するとしています。

【生活の再建】
・避難所等における生活環境の改善(物資のプル型支援への移行など)
・命と健康を守るためのホテル・旅館等への二次避難(利用額基準の引上げ、要配慮者対応など)
・住み慣れた土地に戻るための住まいの確保(罹災証明手続の簡素化、応急仮設住宅供与など)
・切れ目のない被災者支援(見守り・相談、医療介護の負担料の減免、通園・通学支援など)
・金融支援・税制上の対応等(預金・保険金支払いの柔軟な対応、貸付、税納付延長など)

【生業の再建】
・中小・小規模事業者の支援(施設復旧、販路開拓、商店街の再建、伝統産業の継続支援など)
・農林漁業者の支援(農業用資機材等の再建、人手の確保、景観に配慮した復旧・里山づくりなど)
・観光復興に向けた支援(北陸応援割、手厚い旅行需要喚起策、ふるさと納税の促進など)
・地域の雇用対策等(雇用調整助成金の助成率引上げ・支給日数延長、失業手当支給対応など)

【災害復旧等】
・迅速な復旧(公共土木、公共公益施設など)
・復興まちづくり(計画策定支援)
・緊急調査

パッケージで緊急対応が必要とされる各項目からは、大規模災害発生後、早い段階から生活と仕事の両面における支援が必要とされていることがよみとれます。単純に、生命の安全を確保・維持している間に壊れたハードを復旧させれば人々の暮らしがもとに戻るわけではないのです。

被災地再建の課題として、今回とくに表面化したひとつが二次避難のあり方でしょう。石川県では、25日までに県内外で千箇所以上のホテルや旅館を確保しています。受け入れ可能な人数は3万人を超える規模です。ところが、実際に受け入れが進んだのは、26日時点で3千人あまりにとどまります。およそ1割しか利用されていないのです。その主な理由として、二次避難施設では食事の提供がないことが挙げられています。

能登半島地震では、高齢者など要配慮者の被災者が多く、一般の避難所での生活が厳しく災害関連死の懸念も増えてきています。二次避難所は、身体の安全確保の面で考えれば今すぐに移動すべきものでしょう。しかし、人々の暮らしは場所さえあればよいというものでありません。食事や生活用品の調達、診療や投薬など「今後その場所で安心して生活を続けることができるのか」の見通しがたたなければ、未知の土地への移住は不安しかなく、今の場所を離れる決心などつきません。劣悪な生活環境でも、「まだ食べ物が配られるだけまし」「生まれ育った土地のほうがまし」と決断を先送りにしてしまうおそれがあるのです。

一方で、食事など生活必需品の直接の無料配布については、いつまでも続けていると周辺地域の経済を止めてしまう課題もあるでしょう。被災地の再建はこのように、地域の特性に応じ、個人の生活再建と地域経済の復興のバランスをとる必要があり、難しい舵取りが求められているのです。

地方の被災ではこれらに加え、圧倒的な人手不足により支援体制が整わない問題もあります。大規模な災害発生が全国で懸念される今、いかに「ヒト・モノ・カネ・情報」を循環させて安全な土地での生活を持続できるか、法や制度の整備も含めて「生活再建を意識した防災」を検討していく必要に迫られているといえるでしょう。

防災ログ事務局:南部優子


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