防災に対する向き合い方が覆った東日本大震災【3.11の教訓】 防災ニュース

2024年3月11日

<3月11日投稿>近年の災害の中で最も多くの死者・行方不明者を出した東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)が発生したのは平成の後半、2011(平成23)年3月11日です。今年で13年経ちました。その間にもさまざまな地震災害や気象災害があり、記憶は少しずつ薄れてきているかもしれません。しかし、今なお被災地は復興途上であり、大規模災害がもたらす社会への影響がどのような年月を重ねていくのかを、先に立つ教訓として示し続けてくれています。それぞれの場にあって「3.11」の意味を受け止め、これからの行動につなげていくことは、残された者の重要な使命ともいえます。数字だけでは表しきれない当時の状況も含め、あらためて思い起こしてみましょう。

平成23(2011)年3月11日14時46分、三陸沖深さ24kmで地震が発生しました。モーメントマグニチュード(Mw)は9.0という大規模な揺れです。宮城県北部を中心に最大震度7。数分にわたる大きな横揺れが続いたといいます。巨大な揺れを受け、ライフラインは完全に停止。道路や鉄道にも大きな被害が発生しました。

気象庁は3分後に大津波警報を発表します。数十分後から巨大な津波が繰り返し襲いました。観測機器が測定不能となり、推定値で10mを超えたところもありました。津波は川を遡上して平野部にも広がります。この地震は、それまでに想定されていた範囲よりずっと広いプレートが一度に動いた「想定外」の大きさでした。このため、津波も「ここまでは来ないだろう」という予測をはるかに上回る規模で襲いかかりました。

地震が発生したのは年度末せまる金曜日の午後。早春の、雪もまだちらついて寒さが残るときでした。高台に逃げたり屋上に上がったりする人たちがいる一方で、駐車場や校庭にいったん集まってようすをみたり、バスに乗せて入所者を返そうとしたり、車で迎えに行こうとしたりする人で街は混乱しました。停電して信号機が機能していないため、四方から車が来てしまい身動きがとれなくなる「超渋滞(グリッドロック)現象」が起きました。そこへ津波が押し寄せたのです。津波注意報関連は、まる2日たってから解除されます。沿岸部は瓦礫の山になり、復旧作業のために瓦礫を撤去しようとすると行方不明となっていたご遺体がみつかる毎日が続きました。

長大な震源域の海溝型地震として、史上最大級の範囲、最大級の大津波、原発事故を併発した「想定外」の大規模災害となった東日本大震災。2023(令和5)年3月9日時点で、災害関連死を含む死者1万9,765名、行方不明2,553名。今もなお、全国に3万1,438名の避難者を残す巨大地震は、日本列島全体へ多大な影響を与え、その後の関連法や災害対策を一変させていきます。

東日本大震災後に対策が検討されるようになった主な影響を挙げてみましょう。
・甚大な津波被害(逃げ遅れ、避難生活や業務再開の長期化、データ喪失による復旧困難など)
・都市機能の麻痺(大量の帰宅困難者発生、長周期地震動による広範囲の被害)
・経済活動の麻痺(サプライチェーンの寸断、物流システムの機能低下)
・インフラ機能の著しい低下(電力不足、輸送機能の低下、燃料不足など)
・自治体の被災による災害対応の機能停止(対策本部の機能不全、自治体同士の連携困難など)
・情報の混乱(SNSによる誤情報の拡散、急激なアクセス増加による機能停止)

そのほかにも、阪神・淡路大震災以来、地震災害で課題となっていたさまざまな問題がより深刻な課題として浮き彫りにされました。翌年度の防災白書によると、科学技術、災害予防、国土保全、災害復旧、国際協力の5つのテーマで459の項目を数える対策がとられています。

東日本大震災が私達につきつけたのは、どんなに災害を「防災」しようとしても必ずそれを上回る状況は発生し、災害対策にあたる国も自治体も、救援部隊も同時に被災するという事実です。そのような巨大災害の前では、自助・共助・公助がそれぞれ連携しあい、少しでも被害を小さくする「減災」の考え方を心にとめて最大級の事前対策をとっていかなければならないという考え方が育ちました。

今後、長大な領域のプレートが破砕したときの巨大地震として発生する確率が高いと言われている南海トラフ地震をはじめとする巨大地震への対策は、この東日本大震災での被災が身をもって教えてくれたことを踏まえて整備されてきています。南海トラフ地震も首都直下地震も、影響を及ぼす人口規模を考えると、どんなに対策が進んでも無視できない被害の発生が容易に予測されます。

企業防災は、今目の前に広がる日常の課題に追われてしまい「とりあえず形だけでも」「評価が下がるとまずい」などの理由から当面の対策を考えがちですが、ほんとうに自社が生き残るために必要な手立てをとっているかの観点から事前の備えをとっておかなければ、東日本大震災クラスの災害が起きたとき、緊急の対処もできずに潰れてしまうでしょう。
「3.11」をふりかえる機会の多いこの時期に、いまいちど「自分のまわりに起きたらどうなるか」を具体的な身の回りの人々の動きを想像しつつハザードマップなどで確認し、現在の対策が自社の事業継続の方向に沿っているかを検証することをおすすめします。

参考:
内閣府緊急災害対策本部 平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)について 令和5年3月9日(14:00)
https://www.bousai.go.jp/2011daishinsai/pdf/torimatome20230309.pdf

気象庁 平成23年3月 地震・火山月報(防災編)
https://www.data.jma.go.jp/svd/eqev/data/gaikyo/monthly/201103/monthly201103.pdf

防災ログ事務局:南部優子


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