【国難級の災害】首都直下地震の被害は1千兆円超 防災ニュース

2024年3月18日

<3月18日投稿>土木学会が、2023年度国土強靭化定量的脆弱性評価の中間取りまとめを公表しました。これによると、国難級の自然災害のひとつである首都直下地震により経済などが受ける影響は、1千兆円を超える被害額にのぼると推計されています。

この評価は、土木学会(会長 田中茂義)の土木計画学研究委員会が2022年度に設置した国土強靭化定量的脆弱性評価委員会(小委員長 藤井聡)の中で検討されているもので、国難級の自然災害が発生した際にどのような経済への影響が及ぶのかを定量的に評価・推計する検討を行っています。

検討の方向は大きくわけて2つに分かれます。ひとつは、現状のままでどのような被害となるのか、そしてもうひとつが、具体的な対策を行った場合にどの程度軽減されるのか、といった観点で、それらを国内総生産(GDP)という経済面だけでなく、税増収・支出減といった財政面、毀損する建築物・資産など資産価値も加えて評価していきます。

国難となりうる深刻な災害としては、以下の事象が取り上げられています。
・巨大地震:首都直下地震、南海トラフ地震
・巨大津波:南海トラフ地震
・巨大高潮:三大湾における巨大高潮
・巨大洪水:全国109水系における気候変動を考慮した戦後最大洪水

現在、南海トラフ地震は内閣府が被害想定を2023年度中に見直すとしているため、今回の中間報告はそれ以外の災害についての推計結果が公表されました。

首都直下地震は、今から約100年前の1923年に発生した関東大震災の再来として危惧されている地震です。資産への被害が最大となるケースを前提とした想定では、以下の被害が想定されています。
<首都直下被害想定>
・人的被害:2万3000人
・建物等の資産被害:約47兆円
・累積経済被害(道路破損および生産施設毀損)909兆円
・累積経済被害(港湾における交通遮断)45兆円

この国難を避けるために以下の対策を実施した場合、復興年数を5年強圧縮し、被害を約4割(約369兆円)縮減できる見込みとしています。さらに、地震の被害が軽減されることから、復興費は137兆円、税収減少量を14兆円圧縮でき、その結果、プライマリーバランス赤字が151兆円の圧縮が見込めるとしています。
<具体的対策>
・道路対策:道路ネットワークの整備、無電柱化、橋梁の耐震化など
・海岸堤防対策:高潮・津波対応の嵩上げ、耐震化など
・港湾・漁港耐震強化対策:耐震強化岸壁の確保、接続する陸路・海路の機能確保など
・建築物対策:新耐震基準への建て替えなど

この委員会での検討は、公共のインフラ(道路・河川・海岸・港湾)を中心に推計を行っています。巨大災害の被害想定では規模があまりにも大きく、かえって実感がわかないかもしれませんが、この中間報告から読み取りたいのは、公共インフラを強靭化すると約4割の被害軽減が見込めるうえに、災害発生後の復旧や立ち直りを早める効果が高くなるという点です。

国難級までの規模に至らなくても、日本国土では、大規模な自然災害がいつどこで発生するかわかりません。事業者それぞれが、自身の基幹施設の耐震化対策などを見直し、被害の抑止対策と事後の復旧を早めるための「しなやかな防災」を進めておきたいところです。その際に、ぜひこうした報告書で定量的に推計されたデータを活用してください。

今年度末には、内閣府から南海トラフ地震の被害想定の見直し版が発表されます。常に最新情報をとらえて、いざというときへの備えを強化していきましょう。

参考:
土木学会土木計画学研究委員会 2023年度国土強靱化定量的脆弱性評価・報告書の第一弾の報告書
(全体版)
https://jsce-ip.org/wp-content/uploads/2024/03/R6_Mar_jsceip_resilience_report.pdf
(概要版)
https://jsce-ip.org/wp-content/uploads/2024/03/R6_Mar_jsceip_resilience_report_summary.pdf

防災ログ事務局:南部優子


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