道路啓開計画は取り組みに格差あり 北陸圏域は協議会にて検討中 防災ニュース
2024年4月1日
<4月1日投稿>能登半島地震では、海岸や山間部などの道路被害により孤立集落が多数発生したことは記憶に新しいところです。救援や復旧に必要な通行機能については、翌日に災害対応の拠点となる役場へのルート確保、3日後に大型車の通行確保を行って「くしの歯」の背骨になる基幹道路を確保し、約1週間後に背骨から伸びる「歯」にあたる幹線道路の緊急復旧を行って内陸と海側からの7ルートを確保。そして2週間後には日本海側へ9ルートを確保し、半島内の主要な幹線道路の約9割の緊急復旧を行いました。
「くしの歯」は、東日本大震災時の道路啓開が、くしの歯のような形状でルートを確保したことからついた名称で、広域・大規模災害時の通行ルート確保の基本的な考え方となっています。とはいえ、地域により地勢も輸送ネットワークの整備状況が異なりますから、地方ごとの特性を踏まえた道路啓開計画を事前に策定し、地域で実行性を高めるための事前の連携を行う必要があります。
このような背景から、国土交通省では、救援・復旧のための緊急車両の通行ルートを確保する「道路啓開計画」の策定を促してきました。首都直下地震や南海トラフ地震など、大規模災害が想定される地域では取り組みが進んでいます。しかし、それ以外の地域では、道路啓開計画が未策定のところが目立ちます。2023年4月には、総務省から国土交通省に対し、地方整備局と県などの関係機関が認識を共有する協議会等を設置して道路啓開計画の策定などで備えるよう、勧告も出されました。
道路啓開計画は、単に道路啓開を行う優先順位を決めるだけではありません。緊急復旧に必要な人員や資機材の確保、情報共有・伝達方法、災害時の役割分担や対応フローの決定など、関係機関の連携体制を構築し、検討会や訓練により「いざというときの関係」を強化することがむしろ重要となります。道路啓開計画は、地域全体の緊急対応を考えるひとつの軸ともいえ、だからこそ早期の策定が望まれます。
災害が起きてしまってからでは何を言っても虚しいことですが、北陸圏での道路啓開計画に関する協議は、能登半島地震を受けた形で今年2月29日からようやくスタートしました。もし地震発生前に始まっていれば・・・と悔やみきれない思いが残ります。日本列島は、有名なプレート型地震だけでなく、全国どこでも巨大地震が発生する可能性をもっています。いつどこでどんな災害が起きても地域が生き残るための骨格となる道路啓開計画をできるだけ早く策定し、地域の関係機関の協議・連携が進むことを望みます。
参考情報:
総務省 災害時の道路啓開に関する実態調査<結果に基づく勧告> 令和5年4月25日
https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/hyouka_230425000165238.html
国土交通省北陸地方整備局 北陸圏域道路啓開計画策定協議会
https://www.hrr.mlit.go.jp/road/dourokeikai2/dourokeikai.html