【4月の災害】熊本地震 常識を覆す災害はいつでも・どこでも発生する 防災ニュース

2024年4月9日

<4月9日投稿>新年度が始まって間もない4月3日、沖縄県石垣島の西南西250kmの台湾東部沖で大地震が発生しました。日本時間で3日午前8時58分、地震の規模はマグニチュード(M)7.7。日本でも、与那国島と宮古島で30cm、石垣島で20cmの津波を観測しています。台湾では、これまでに13人の死亡が確認され、まだ連絡がとれない人もおり、捜索活動が続きます。

もうひとつ世界をみると、ニューヨークの隣のニュージャージー州で5日午前10時20分(日本時間5日午後11時20分)にM4.8の地震が発生しました。アメリカ東部で地震が発生するのは極めて珍しく、ニューヨーク近郊での地震では1884年のM5.2以来、実に140年ぶりの大きな揺れとなりました。目立った被害は確認されていませんが、交通機関や空港便に混乱が生じる場面もみられました。

地震は、めったに起きないとされている場所でも突然やってきます。被害想定が大きな首都直下地震や南海トラフ地震などに気を取られていると、それ以外のところは揺れが小さくてすむような錯覚に陥りがちですが、地球全体が変動する地殻の上に生活しているわけですから、どこでも大規模な揺れは発生し、備えがなければ大災害につながります。

4月に九州地方を襲った大地震として記憶に新しい2016年の熊本地震も、そのような常識を覆す地震のひとつでした。熊本地震のいちばんの特徴は、何度も続いた大きな揺れです。気象庁の震度階で最も大きい震度7の地震が、14日21時26分(M6.5)、と16日1時25分(M7.3)と、わずか28時間の間に最大階級の揺れが同じ場所を襲ったのです。後から起きた地震のほうが大きな規模で、1回目が前震、2回目が本震と認定されました。本震が後からきた地震も初めての経験でした。

それ以外にも震度6強が2回、震度6弱が4回、震度5強が5回、震度5弱が14回と、大きな余震が続きます。2年後までに発生した最大震度1以上の有感地震は実に4,297回。震度計による観測が始まった1996年4月以来、最も多い回数でした。異例の地震活動により、気象庁が発表する防災情報のひとつである余震の発生確率は「過去の例があてあまらない」と発表をとりやめたほど、規模と頻度の予測がつかない内陸地震となりました。

一連の地震による被害は揺れによるものが多く、死亡した50名のうち、家屋倒壊によるのが37名、土砂災害が10名、火災が1名、塀の下敷きになったのが1名と、圧死が7割を超えました。さらに、相次ぐ揺れを警戒して建物内での避難をためらい、テントや車中泊を続ける被災者も多くいました。エコノミークラス症候群(静脈血栓塞栓症)で初の死者が出るなど、災害関連死と呼ばれる死亡者を含めると、犠牲となったのは276名。直接死の4倍以上の方が災害関連死となりました。

もうひとつ、熊本地震には大きな過去にない特徴がありました。複合災害です。巨大地震発生からわずか2か月後、九州地方を豪雨が襲ったのです。九州地方は、前線の通過などに伴って積乱雲が群をなして発生し停滞する「線状降水帯」が起きやすいなど、しばしば豪雨災害に見舞われています。熊本地震が発生したのは4月中旬。大きな余震が何度も続く中、2か月後には梅雨の時期となってしまいました。6月19日から梅雨前線が活発化し、25日ごろまで約1週間、西日本を中心に九州から関東にかけ、死者7名、負傷者12名、住家被害291棟、床上・床下浸水2,535棟(消防庁調べ)と、広く被害が発生しました。全国で513件の土砂災害(国土交通省調べ)も発生する大規模な水害とのダブルパンチとなってしまったのです。

熊本地震の発生から8年が経とうとしています。熊本県では、地震発生から続けてきた復興状況を共有する会議を、11回目を迎えた5日をもって一旦終了しました。重点的に取り組んだ10項目のうち5項目が完了し、残りの5項目についても完了の目途がたったとしています。しかしこれはあくまでも一区切りついたにすぎません。人や社会が再建から発展へと方向を創造的に進め、ほんとうの意味で復興を遂げるのはまだまだこれからだというのは、阪神・淡路大震災や東日本大震災をみても明らかでしょう。
一度大規模災害に見舞われると、立ち上がるのに大きな犠牲を必要とします。国内外に目を向けて、各地の貴重な教訓を糧に、「今私たちのところにこのような災害が来たらどうなるか」のイメージを膨らませて、来るべき巨大災害に備えましょう。


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