カムチャッカ半島沖の地震、日本まで迫った津波 防災ニュース
<8月2日>現地時間7月30日11時25分、カムチャツカ半島沖を震源としてマグニチュード8.8の地震が発生しました。この規模の地震は現在の地震計で記録されたものの中では6番目の大きさのものであり、これによって太平洋全域にわたって津波警報・津波注意報が発令されました。日本も例外なく、地震の発生とともに北海道をはじめとした太平洋沿岸の都道府県に津波注意報が発令され、マグニチュードの改定に伴って警報まで引き上げられました。結果として、ロシアではカムチャツカなどいくつかの地点で5,6mの津波が目視で確認されたと報告され、日本でも静岡県の久慈にて1.3mの津波が確認されたほか、北海道から沖縄県までの太平洋沿岸の都道府県にて1m未満の津波が到達しました。幸いにもロシア日本の両方にて、津波の直接被害による死者は出ていないとされています。(8月2日時点)
ここで勘違いしてはいけないのは、1mに満たない津波であっても十分に危険であるということです。
まず津波は、通常私たちが海で見る波浪とは性質が大きく異なります。波の山から山までの長さを示す波長について、波浪は最大で数百mであるのに対し、津波は数㎞を超えることも多いです。これが意味するのは、同じ高さの波であってもその奥行きが大きく異なるということになります。
例えば200mの平行な海岸線があったとして、そこに50㎝の高さの波が来た場合の概算をしてみると、普段見るような波浪で波長が10mであれば、押し寄せる山の部分の水の体積は「0.5m × 200m × 5m = 500㎥」と見積もれます。
・高さ:0.5m(波高)
・幅:200m(海岸線の長さ)
・奥行き:5m(波の山の厚み)※波は「山 → 谷 → 山…」と続くので波長10mの山の部分は約5m。
一方、波長1㎞の津波の場合は「0.5m × 200m × 500m = 50,000㎥」となり、押し寄せる水の量の差が非常に大きくなります。
・高さ:0.5m(波高)
・幅:200m(海岸線の長さ)
・奥行き:500m(波の山の厚み)
これはあくまで説明のための簡単な概算で実際の押し寄せる水量を出すものではありませんが、波長の違いが大きな差を生むことをここでは理解していただければと思います。
また津波はその水量の多さから、波と一緒に様々なものを運んでくる可能性もあります。例えば津波が砕いた木材などが波の中に隠れており、波に巻き込まれた後その木材にぶつかる可能性があるということです。ほかにも当時多くのメディアで報道されていたように、第2波第3波がより大きくなってやってくるということもあります。これらのことから、いくら波高が低いとはいえ、決して油断することなく避難を続けることが私たち一般市民に求められる役割となります。
もちろん津波による被害を防ぐために、学術機関も日々研究を続けています。東北大学の越村教授は、発災後の迅速な対応のために地震発生後短時間での津波浸水被害予測技術について、産学連携のもと開発を進めています。来る巨大災害に備えて、引き続き総力をもって挑んでいく必要があるといえるでしょう。
参考文献
USGS releases aftershock forecast for M8.8 Russian Kamchatka Peninsula Earthquake, USGS
https://www.usgs.gov/news/featured-story/usgs-releases-aftershock-forecast-m88-russian-kamchatka-peninsula-earthquake
越村 俊一| 東北大学 災害科学国際研究所
https://irides.tohoku.ac.jp/organization/koshimura.html

【津波警報】津波警報に切り替え 福島県含む北海道、東北地方太平洋沿岸など 津波到達予想時刻は午前11時、最大3メートル 09:40時点、テレビュー福島