2019年台風第15号は、コンパクトだが威力の大きい台風が与える大都市圏への影響をあぶりだした 防災ニュース

2019年9月12日

9月12日

台風第15号の気象概要

台風第15号は、9月7日(土)から8日(日)にかけて小笠原近海から伊豆諸島付近を北上、9日(月)の明け方ごろ強い勢力のまま東京湾を進み、5時前に千葉市付近に上陸した後、茨城県沖に抜けました。台風の接近・通過に伴い、伊豆諸島や関東地方の南部を中心に猛烈な風雨となりました。特に、千葉市で最大風速35.9m、最大瞬間風速57.5mを観測するなど、多くの地点で観測史上1位の最大風速や最大瞬間風速を観測する記録的な暴風となりました。

 

台風第15号による被害の概要(9月11日現在の速報値)

台風が通過して2日たった11日現在、以下の被害状況が判明しています。

【人的被害】死者1名、重軽傷者84名

【建物被害】全半壊7棟、一部損壊825棟、床上・床下浸水46棟。重要施設では、原発施設冷却塔・石油コンビナート燃焼放散塔の倒壊(負傷者・環境への影響はなし)

【避難情報】避難指示(緊急)2市3,863世帯8,613名、避難勧告16市町18,091世帯53,366名

【住民の避難】避難所開設数は最大で303箇所(9月9日13:50時点)、避難者数は11日7:00時点の1,247名を最高に、9月11日13:30現在も955名が避難中

【停電】最大で関東地方を中心に約828,100戸(9日13:00現在)。暴風雨による配電設備の故障、鉄塔の倒壊などを原因とする停電が長期化し、11日13:00現在でも約430,400戸が停電中。

【断水】最大123,878戸。11日13:00現在で24,183戸が断水中。

【通信】伝送路断絶や停電により、直後より停波が拡大。11日13:00現在、光回線など千葉県を中心に、約176,800回線に支障。その他携帯電話のエリアにも支障。放送局の停波も多数。

【交通】最大で鉄道35路線が運休、バス73路線が運休または一部運休。空港は8日から9日にかけて309便が欠航。海路では12事業者17航路で運休または一部運休(9日12時現在)。11日現在でも鉄道8路線が運休、バス38路線が運休または一部運休、海路2航路が運休。

【自衛隊派遣要請】10日04:00に千葉県知事より災害派遣要請(一般向け給水支援)、10日15:25に神奈川県知事より災害派遣要請(倒木及び土砂撤去)

 

台風の特徴と社会的な影響

台風第15号は、暴風域はさほど大きくならず、気象庁が発生後間もないころ「コンパクト」と表現したほどでしたが、一方で観測史上最大の暴風を記録するほどの強い勢力をもっていました。日本列島への接近が週末にかかり、上陸が月曜日の明け方ごろになったことから、気象庁や交通機関の計画運休情報をもとに勤務に関する状況判断を行う企業側の体制が整わず、駅までの道に長蛇の列をつくる通勤者で混雑しました。また、台風通過後空港を再開させた際、連絡する鉄道が運休していたため空港から乗客が出あられず、孤立して夜を明かす混乱も生じました。

最大級の暴風雨による停電や断水等のライフライン途絶は、都市部の脆弱性を浮き彫りにしました。特に千葉県の被害がひどく、台風後に猛暑が襲う中、停電の長期化によるエアコン機能不全と水不足による熱中症による被害が深刻な問題となっています。

ほかにも停電の長期化による被害は、通信回線やテレビ回線の停波、冷却・冷凍設備の機能不全による店舗の閉鎖、病院の機能停止による透析患者の受け入れ問題など、台風通過直後だけでなく長期にわたり、生活のあらゆる面で大きな影響が生じています。

防災ログ事務局:南部優子


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