ハザードマップの限界と社会がとるべき対策(2)正しいリスクの認知方法とは コラム
2019年11月25日
11月25日 前回は、台風19号の被害を例に、亡くなられた方の3割がハザードマップの「想定外」のエリアで被災しておられた話をいたしました。また、ハザードマップは作成時の調査内容から考えてもリスクの表現に限界があることも、お伝えしました。
一方で、7割の人がハザードマップの範囲の中で亡くなっていることを考えると、ハザードマップに記載され、すでにわかっているリスクはしっかりと回避できるように計画することが重要なのは間違いないといえるでしょう。
リスクへの対処の基本は、「正しく恐れる」ところから始まります。つまり、その土地ではどのようなリスクが発生しやすいのかを正しく理解した上で、身の安全や生活の維持を確保するための方法を考えていくという流れが重要なのです。
ハザードマップは、様々な自然現象がその土地にどのような影響を与えるか、リスクの現れやすさを地図上に示したものといえます。その土地にどのようなリスクがあるのか、その影響はどのくらいなのかを客観的に理解するためのツールです。
このとき注意しなければならないのは、「安全」な場所を正しく示しているものではなく、リスクの大きさの目安が地図上で示されているというところです。
ハザードマップは、災害の現象によっていろいろな種類があります。
<地震>
・揺れやすさ(震度)
・液状化
・建物倒壊
・大規模火災
<津波>
・津波浸水域
・津波高
・到達時間
<風水害>
・外水氾濫による浸水
・内水氾濫による浸水
<土砂災害>
・土砂災害警戒区域
・土砂災害特別警戒区域
ハザードマップの名称は自治体によって様々でです。
原則として、ハザードマップは市町村が作成します。地震(海溝型・断層型)はでは内閣府や文部科学省の地震調査研究推進本部が、風水害では国土交通省の河川関係が、また土砂災害では国土交通省の砂防関係が、ベースとなる災害の影響に関する検討を行い、これを受けて都道府県が社会的な要素を加味した被害想定を策定して市町村と共有し、市町村が具体的な避難計画を作成するためのベースとしてハザードマップを作成するという流れが一般的です。(政令市や中核市などでは独自に調査するところもあります)
このため、さきほど挙げた災害の想定は、市町村によっていろいろになり、すべての市町村がすべての種類を作成しているわけではありません
ハザードマップをみるときは、次のような点に注意し、「もしも被害になるとしたらどの部分の可能性が高いだろう」というチェックで早め早めに安全を確保し、リスクが低いと思われるところでも災害が発生する可能性があることを忘れずに、職場や家庭の中でふだんからどんな行動が適切化を考えておくことをおすすめします。
- ・どの災害事象を前提としているか(地震なら断層名、風水害ならどの降雨量など)に注目し、実際に起きている災害との相違点をつかむ
- ・リスクが高いとされている場所は被害が大きくなりやすい場所、それ以外でも被害は出る可能性があることを心得ておく
- ・地震であれば道路幅、風水害であれば地面の高さなどに着目し、避難ルートの状況を確認しておく
- ・可能であれば実際に歩いてルートを確認し、側溝や頭上などのようす、別ルートへの退避方法などをイメージしておく
まずは自分の関係する市町村のサイトで、どんなマップが紹介されているかを調べてみましょう。
国土交通省のサイトに全国のハザードマップが紹介されているポータルサイトもありますので参考にしてみてください。
また、自治体によっては、過去に実際に起きた災害から土地のリスクを紹介しているものもあります。
例えば、名古屋市では、ハザードマップの他に、「地区防災カルテ」といって、過去に起きた災害や、町名の由来から災害の起きやすさをイメージできる資料も紹介されています。
http://www.city.nagoya.jp/bosaikikikanri/page/0000110628.html
ふだんから眺めておいて、いざというときにしっかり頭の中でシミュレーションできるようになっておきましょう。
防災ログ事務局:南部優子