大川小の教訓を事前対策と事後対応に生かそう 宮城県で学校防災の有識者会議が初会合 コラム
2020年2月12日
2月12日 宮城県教育委員会は2月5日、学校防災のあり方について検討する有識者会議の初会合を開きました。この有識者会議は、東日本大震災により児童と教職員84人が犠牲となった大川小学校の対応をめぐって遺族が起こした訴訟で、2019年10月、石巻市と県に対し約14億3600万円の賠償責任を認める判決が確定した件を受けて立ち上げられたものです。会議では、震災後に行ってきた県内の学校防災対策の成果を検証するとともに、大川小学校の判決を今後どう生かしていくかを検討。5回程度開かれ、来年度中に検討内容を取りまとめるとしています。
大川小学校の教訓とは、どういったものだったのでしょうか。
地震発生当時、大川小学校の児童の大半が教員の誘導により校庭に集まっていました。津波が来るまで約50分あったのですが、そのまま校庭にとどまり続け、津波が押し寄せる直前になって裏山ではなく反対の川に近い高台へ逃げようとして津波に襲われました。裁判ではこのような地震発生後の対応や判断を問題にしていましたが、もうひとつ指摘されたことがあります。事前対策です。1審では地震後の対応、2審では地震の前の備えが重視されました。実は、当時のハザードマップで大川小学校は津波の予測範囲から外れていたのです。このため市や県は事前の予測ができなかったと主張していたのですが、高裁では、予測には誤差があることや、学校は一般より高い水準で危険性を予測し、マニュアルなどを整備する必要があったと事前対策の不備を指摘しています。最高裁でも、具体的な理由は示さなかったものの2審の結論を維持しました。学校側に厳しい安全確保義務を求める結果となったのです。
子どもは大人の言うことを素直にききます。小さな誘導のゆらぎが大勢の命を失う結果になりかねません。実際、校庭で遊んでいる児童に「今地震が起きたらどうするか」と尋ねたとき「大急ぎで教室に戻って机の下にもぐる」と答える子が少なからずいると言います。災害時には「そんなつもりはなかった」「予想できなかった」という言い訳は通用しないのです。
災害への対策については、学校や行政だけでなく企業に対しても、安全確保義務に関する事前・事後の対策の不備で訴訟が起きるようになっています。自然災害は、必ず予測を超えた事態が発生します。現在の想定に限界があることを理解し、危険性を予測し、現場の不備を点検して災害対応の実行性を上げていくための定期的な見直しをしていくことが必要です。
防災ログ事務局:南部優子