95%の自治体が避難所の改善を課題に感じている コラム

2020年2月20日

2月20日 全国の市区町村のほぼ全数にあたる95%が、災害時に開設する避難所について改善が必要と感じています。これは共同通信社が昨年11月から今年1月にかけて実施した自治体向けのアンケート調査によるもので、改善を必要と感じる自治体の半数がプライバシーの確保を課題と考え、段ボールベッドや仮設トイレ、冷暖房の配備など、避難所での生活環境を向上させる必要を認識する一方、予算不足やノウハウがないなど、対応に苦慮している姿が浮き彫りになってきました。

災害時の避難所に関する課題では、特にトイレとプライバシーの確保が急務とされています。過去5年以内に避難所へ宿泊経験のある人を対象に行った調査では、最も困ったのがトイレ(59.4%)で、それに続くのがプライバシー(53.4%)でした。(株式会社ネオマーケティング調べ、2019年12月)

避難所の運営については、これまでにも大きな災害が起きるたびに環境改善の課題がとりあげられてきました。2016年には内閣府により「避難所運営ガイドライン」もまとめられています。
このガイドラインは、人道憲章の枠組みにもとづく国際基準となる「スフィア基準」を参考に、避難所生活の質を考えようとするものです。

「スフィア基準」は、1994年に起きたルワンダ虐殺で大勢の難民が発生したとき、難民キャンプの劣悪な環境で大勢の人が亡くなり、「助かるはずの命をつなぎとめておけなかった」という教訓から、難を逃れた人達を支援する現場で最低限守るべきことをまとめた基準です。
(スフィアハンドブック2018  https://jqan.info/documents/sphere_handbook/

じつは、日本の避難所は、諸外国と比べて環境の悪さがよく指摘されているのです。災害時なのだから甘えてはいけない、がまんしなければならないという雰囲気になりやすく、行政側も全員に「平等」に接しなければならないとこだわり、せっかく届いた支援物資を配らないなど、災害のたびに様々なトラブルが起きています。

スフィア基準はマニュアルではなく、状況に応じた考え方の方針を示すもので、必要に応じて配るという「公平」を大切にします。支援する人も支援される人も多様になってきている避難所運営。公平にきめ細かく対応する必要が生じたときの根拠としてスフィア基準を活用することができるでしょう。

小さな市区町村が単独で避難所を整備するのはたいへんです。国や都道府県などの垂直ラインで支援を求めるだけでなく、市区町村どうしの連携や民間企業・NPOとの協働など、さまざまなアイデアを形にして事前整備を進める必要があります。こうしたときにも、スフィア基準の考え方を参考にして、できることから始めていきたいものです。

防災ログ事務局:南部優子


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