銀行のコロナ対応に学ぶ非常時のBCP 起きてからでは頓挫する コラム

2020年3月5日

3月5日 新型コロナウイルス感染症の流行が拡大し、経済に大きく影響を与え始めています。感染症は自然災害の発生としくみは異なるように見えますが、ウイルスという外からの脅威に対し、どれだけの抑止力を働かせて通常のビジネスを維持していくかという「事業継続」の考え方には共通するものがあります。

ひとつ参考にしたいのが、愛知県の銀行の対応です。勤務する行員1名が感染していることが判明した際、その行員と濃厚接触した可能性のある行員たちに対し自宅待機を命じたほか、保健所などと協力して濃厚接触のおそれのある顧客の調査、経過観察、店内やATMなどの消毒、本部からの代替要員の派遣などを行い、翌日から通常通りの営業を維持しました。

このような迅速な対応で業務を維持できたのは、事前にこのような事態を想定して対策の計画をたてていたこと、感染者が出る前から対策本部体制を立ち上げて備えていたことが大きいと考えられます。
企業では、地震や風水害など災害が発生した場合に備える事業継続(BCP)に注目が集まりがちですが、外からの脅威の中には、今回のような「徐々に悪化し、突然爆発的に非常事態となる」状況も想定されることを忘れないようにしなければなりません。

BCPは、事業の生命線を断ち切らないよう、企業にとって最も重要な業務を守るためにできる対策を計画していくものです。嵐に遭ったときに船の積荷を減らして沈没するのを防ぐようなもので、単なる災害対応マニュアルではなく、何を見捨てて何を守るかをシビアに決めておく計画です。

今回の銀行の対応をみてみると、状況の正確な把握(濃厚接触者の特定と経過観察)、緊急の復旧対応(接触した場所の特定と消毒)、最低限の業務を確保するための代替手段の確保(本部からの要員派遣)、迅速な広報など、他の災害時に行うべき対応の要点がおさえられており、普段からすぐに体制をとって動けるよう、シミュレーションして備えていたことが伺えます。

非常事態への備えを考えるとき、被害を出さない「防止」対策をすることで安心しがちですが、実際に被害が発生した状況(今回でいえば感染者の発生)までの最悪を想定して最小限の影響にとどめるための「軽減」対策をあらかじめ想定して備えなければ、悪影響の連鎖が生じてしまいます。
企業の命を守るため、重要な業務を見極めて、どんなときでも維持する備えを講じる。それでも停止せざるをえなくなることを想定し、少しでも早く再開させる方法を考えておく。すぐに動けるよう、体制の確保、対策の整備、シミュレーションと訓練を明確にする。ほんとうに企業を守るための事業継続計画(BCP)になっているか、いまいちど見直してみてはいかがでしょうか。

防災ログ事務局:南部優子


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