「いざというときには動けない」被災経験者は実感 コラム

2020年3月10日

3月10日 まもなく東日本大震災が発生してから9年を迎えようとしています。東日本大震災発生の前後で災害に対する意識がどのように変わったのかについて、このほど調査会社がアンケートを実施しました。調査のなか、被災した場合としなかった場合の別で「災害に遭った際、最も重要だと思うものを教えてください」という設問があるのですが、ここからみえてくるものをご紹介しましょう。

被災を経験した人とそうでない人との間で、災害時に重要なものの認識は、上から3位まで同じになりました。
1位 電気、水道、ガスなどのライフライン
2位 水や食料
3位 とっさの判断力
これらの認識が全体に占める割合も、いずれも9割前後(被災経験者91.4%、被災未経験者89.4%)と大きな違いはなく、大部分の共通認識であることが伺えます。

この結果で実際に被災を経験したかどうかで注目したいのは、それぞれの割合です。大きな特徴として次のような傾向が見てとれます。
・ライフラインは、被災経験者の割合が多い(9.4%多)
・とっさの判断力は、被災経験者の割合が少ない(5.6%少)
・水や食料は、どちらも同じような割合だがやや被災経験者の割合が少ない(2.1%少)

実際に被災したときに「とっさの判断力」はあまり役に立たなかったという経験が多くみられたのではないかと考えられます。水や食料などの備蓄はもちろん重要だった。でも結局のところ、電気や水道などのライフラインがしっかりしていなければどうにもならなかった。巨大災害の前では、正確な状況判断で臨機応変に対応することの難しさが身にしみたのではないかと推察します。

企業防災でも、災害への備えは事前対策と事後行動の2本柱で考えておくべきであるとよく言われており、避難や復旧対応、備蓄放出などの「とっさの判断力」を強化する事後行動マニュアルは積極的につくられたり防災訓練なども行われたりします。しかし、今回の被災経験者の回答からみえてくるのは、「災害後の行動も大事だけれど、そもそも基幹機能であるライフラインが機能しなければ立ち行かない」という教訓ではないでしょうか。

大規模災害時の事業継続に重要なポイントとして挙げられる「代替機能の確保」というのは、平常時のライフラインが停止したときに備えて非常時のラインを確保しておくという重要な事前対策です。自社の重要業務を維持するためにどの程度の代替機能を準備しておくべきか、平常時のうちに検討しておくことをおすすめします。

防災ログ事務局:南部優子


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