もしこのタイミングで地震が起きたら? 複合災害の想定、していますか? コラム

2020年4月6日

4月6日 日々刻々と状況が変わる新型コロナウイルス感染症。外出して集まるリスクが高まる今の状況の中で、もし地震などの災害が発生して避難しなければならなくなったら、みなさんどうしますか?「そんな事態が起きる確率は低いし、そこまで考えていたらお手上げだ」と思われるかもしれませんが、実際、2016年4月に熊本地震のときにはその2カ月後に豪雨が襲い、洪水や土石流などの甚大な被害が発生しました。駐車場でテントや車中で避難をしている人が多くいたこともあり、対応に追われました。新型ウイルスの感染症はかなりの長期戦になりますから、このままだと梅雨どきの大雨災害による避難ということもありえます。

実は、国や自治体が策定している防災計画は、それぞれの自然災害別にはかなり力を入れて災害の想定やシミュレーションを行い、具体的な対応策を講じています。例えば、地震災害に対する計画やマニュアルには、避難時にノロウイルスや季節性のインフルエンザが流行する可能性を考えた防疫活動を行うという対策は、具体的にしているところが多くあります。ところが、複数の災害が同時に大規模発生する「複合災害」については、なかなか具体的なところへ踏み込んだものは検討できていないのが実情です。

防災計画は、最悪を想定して備えることが原則ではあるものの、具体的な対策をたてる際には順序づけが必要です。事業を考えるときと同じで、防災対策も緊急度と重要度のバランスをとって進めていくため、同時に大規模な災害が発生する確率を考えると優先順位が下がってしまうわけです。

しかし、万全の手を打つというのが困難な場合だからといって、今避難することになってしまうかもしれないという可能性を頭から追い出し、考えないことにするというのはよくありません。
自然災害は、社会の状況を考慮せず発生します。感染症が大流行しているときに地震が発生することも、可能性はあるのです。

今できることを最大限活用できるよう、最悪の状況をシミュレーションしておくことが重要です。たとえば、新型コロナウイルス感染症で、クラスター(集団感染)を引き起こさないための行動として、「密閉空間」「密集場所」「密接場面」を避け、マスクや消毒の徹底が呼びかけられていますが、避難所で同様の対策が、どこまで、どのような形で実施可能かを検討しておくことはできます。

完璧な対処は難しくても、例えば
・簡易的なものでもよいので、マスクをつけることができるよう備蓄に加える
・空気の流れができるような換気方法をマニュアルに加える
・手洗い、消毒を全体で頻繁に行えるよう備蓄を増やす
・避難スペースとして開放するところを増やす第二プランをたてる
・高齢者・基礎疾患のある人は壁で仕切られた部屋を割り当てられる順序を決めておく
・ダンボールの間仕切りで個室をつくることができるよう備蓄を増やす
・自宅避難しやすいよう、応急危険度判定を急いだり、物資の配布方法を工夫し、マニュアルに加える
といった対応であれば、今の備えの延長上でできることも多いはずです。

企業や家庭でも、国や自治体が手を打たないからとあきらめてしまうのではなく、今できることを考えましょう。「もし今地震が来たら」「もし台風の季節までこの状況が長引いたら」とイメージをふくらませ、周囲の人たちと知恵を出しあい、対応を検討しておくことをおすすめします。

防災ログ事務局:南部優子


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