前線の停滞で記録的大雨 平成最大の人的被害となった平成30年7月豪雨 コラム
2020年6月1日
6月1日 2018(平成30)年6月28日から北日本に停滞していた前線が南下し、同じ時期に発生していた台風7号が北上してきたため、7月5日から8日にかけて西日本から東海地方を中心に広範囲で記録的な大雨となりました。6月28日から7月8日までの総降水量は、多いところで平均値の約9倍にも達しました。長時間にわたり記録的な大雨となったため、大雨特別警報が1府10県に発表されるなど、前例のない雨量となりました。
岡山県・広島県・愛媛県を中心に河川の氾濫や土砂災害が相次ぎ、1府13県で200名を超える甚大な被害が発生しました。
・死者224名 行方不明者 8名
・全壊、半壊、一部損壊 約2.1万棟
・床上浸水、床下浸水 約3万棟
・停電 約8万戸、断水戸数 約26.4万戸
・鉄道115路線運休、高速道路19区間被災し通行止め
・22河川35箇所の堤防決壊、19都道府県88市町で内水氾濫
・土砂災害2512件、ため池決壊32箇所
気象庁はあらかじめ甚大な災害が発生するおそれがあるとして、特別大雨警報を発表する前に緊急会見を開くなど、厳重な警戒を呼びかけていました。また、多くの自治体で避難勧告も発令されました。避難勧告や避難指示(緊急)の対象者は最大で約860万人にも及びました。
ところが、実際に避難所へ避難したのは最大で約4.2万人。0.5%しかいませんでした。広島市の調査では、避難場所以外の場所や自宅の上階などへ移動した場合を含めて「避難した」と回答したのは2割強だったそうです。多くの人が自宅にいて亡くなってしまいました。また、被害の大きかった岡山県倉敷市真備町の現地調査によると、避難勧告の発令直後に多くの住民が避難所へ殺到して道路の渋滞が発生したという問題もみつかりました。
これまでに、ハザードマップなども整備され、住んでいる土地のリスク情報も提供されていたものの、重要性や記載された地図の読み取り方、リスクの意味などが十分に理解されないまま、警報が出ても切迫感をもてず、避難を決断できない住民が多くなり、逃げ遅れた高齢者を中心に人的被害が発生したものとみられます。
この平成30年7月豪雨は、住民一人ひとりが自分の命は自分で守るという意識をもち、事前に住んでいるところのリスクを知っておいたり、避難勧告が発令されたときの行動を決めて訓練しておいたりする行動の重要性が改めて認識された災害でした。
地球温暖化に伴う気象状況の激化や、自治体の職員の対応にも限界があることから、大規模な災害発生時には、行政の対策だけでは命を守ることはできません。
みなさんは自分の関係するエリアのハザードマップを確認したことはありますか? もし近くの河川が氾濫するなどの浸水被害が起きたとき、どこを通って移動すればよいのか、確認していますか?
実際に大雨になってからでは間にあいません。いまのうちに話し合って準備をしておくことをおすすめします。
画像出典:岡山県「平成30年7月豪雨」災害検証委員会 第1回検証委員会資料2-(1)平成30年7月豪雨災害による被災状況より
防災ログ事務局:南部優子