朝の通勤時間帯に発生した大阪北部地震 都市部特有の課題が顕著に コラム

2020年6月8日

6月8日 2018(平成30)年6月18日に発生した大阪府北部地震は、マグニチュード6.1の規模で、大阪市から大阪府北部にかけて最大震度6弱、大阪府、京都府、滋賀県、兵庫県、奈良県の一部で震度5弱以上を観測しました。地震による死者は6名で、うち2名はブロック塀が崩れたことによる被災でした。住家被害は全壊21棟、半壊454棟、一部損壊約5.7万棟で、停電は最大で約17万戸になりました。

この地震で特徴的だったのは、地震の発生時刻が午前7時58分と朝の通勤・通学時間と重なったことで、都市部の交通が麻痺するなどの都市空間のリスクが浮き彫りになったことでした。

地震発生により、公共交通の柱となる鉄道が運行停止となった後、点検を行った上で順次再開となるのですが、突然止まった車両に残された多数の乗客が避難するまでに相当時間がかかった上、異なる鉄道会社の相互乗り入れが進んでいることから、点検が終わった区間でもすぐに運行再開させるのが困難となるなど、路線などの被害が少なかったにもかかわらず、運休が長引いてしまいました。また、鉄道の運行停止に伴って自家用車に切り替えて出社する車両や、通行止めになった高速道路から流入してきた車両によって交通渋滞が平時と比べて最大で約7倍も大きな規模となり、解消までに14時間もかかりました。

大阪北部地震は、最大で震度6弱という規模で、これから発生する懸念があるとされている南海トラフ地震に比べると大きくはありませんした。近年は耐震補強対策が進んでいることもあり、震度6弱程度の場合、壊滅的なダメージを受ける建築物などはそれほど多くはないでしょう。一方で、このクラスの地震の場合、なんとかして出社しなければならないと考えた通勤者(出勤困難者・帰宅困難者)が自家用車やタクシーを使ったり、歩道からあふれて歩きだしたりして道路が渋滞することにより、緊急的な救急やライフライン復旧などの災害従事車両が通行できなくなるなどの影響が出ることも考えられます。

地震は予告なくやってきます。都市部では災害時にがんばって出社したり帰宅したりすることがむしろ二次災害を引き起こし、都市全体の災害からの復旧を遅らせることがあると肝に銘じましょう。どうしても出社しなければならない業態と自宅待機させる業態とを分けて安全確保するなどの企業ルールを決めておき、災害発生時の情報共有方法や自宅待機時のテレワークを整備する、帰宅抑制のための社内備蓄を整備するなどの備えが重要です。

防災ログ事務局:南部優子


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