気象災害の基礎知識(2)土砂災害の種類と防災気象情報 防災ニュース
2020年8月25日
8月25日 気象災害の第二弾は、土砂災害に関する情報をまとめてお伝えします。土砂災害は、大雨や集中豪雨などを引き金に、突発的に大きな破壊力で襲いかかってきます。日本列島は山林の面積が多く、2000m級の山脈が列島を分断するなど、雨雲が折り重なるようになって雨が集中します。また急勾配の山が多く、土砂災害が発生しやすい環境にあるといえます。
土石流
長雨や集中豪雨などの影響でゆるんだ山肌の土砂が一気に下流へ押し流される現象です。
規模によりますが、時速は20~40kmと自転車より速く、走って逃げても間に合いません。
崖くずれ
斜面が突然崩れ落ちる現象です。大雨のほか、地震によっても発生します。
予告なく発生し、崩れるスピードが早いのが特徴で、崩れた土砂は斜面の高さの2~3倍も遠くまで届くこともあります。
地すべり
斜面が大きなかたまりで下へ滑り落ちるように移動する現象です。表面部分が崩れたものを表層崩壊といい、表面だけでなく内部の地盤もいっしょに崩れたものを深層崩壊といいます。大雨や雪解けのときに発生しやすく、一度に広い面積が崩れるので、被害の範囲が大きくなります。
土砂災害リスク情報
土砂災害が発生するおそれのある場所は、「土砂災害危険箇所」として指定されています。
・土石流危険渓流
・急傾斜地崩壊箇所(崖くずれ危険箇所)
・地すべり危険箇所
また、危険箇所に対し住民に危険が及ぶ恐れがある区域は、警戒すべき区域として、次の2つのエリアにわけて指定されています。自治体から土砂災害のハザードマップとして発表されているものも多いので、確認しておきましょう。
土砂災害警戒区域(イエローゾーン)
土砂災害が発生するおそれがあり、発生した場合に住民に危害が生じるおそれがある区域
土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)
イエローゾーンのうち、土砂災害が発生した場合に建築物に損壊が生じて住民に著しい危険が生じる恐れがある区域
土砂災害に関する防災気象情報
気象庁から大雨警報(土砂災害)や土砂災害警戒情報が発表された場合、かなり土砂災害の危険性が高まったと考えられます。
このとき、気象庁と都道府県が合同で大雨警報(土砂災害)の危険度分布を発表しています。地域メッシュで危険度を色分けしたものです。土砂災害危険箇所のエリアと重なっているところは避難が必要な区域として避難行動をとる必要があります。
(画像出典:気象庁 土砂災害に関する防災気象情報の活用)
細かい基準を覚えるのはたいへんですが、大きな目安として、現在、災害の危険情報は、黄色「注意」赤「警戒」紫「危険」黒「災害発生」というレベルで色が統一されている点を覚えておくとすぐに判断できてよいでしょう。
土砂災害に関する避難情報
土砂災害危険度分布などをもとに、自治体が対象範囲とタイミングをみながら避難情報を発表します。
河川の災害と同じで、避難情報には3段階あって、災害のレベルに合わせて色分けされています。
河川による洪水災害と同様、注意してほしいのは、紫の「避難勧告」と「避難指示(緊急)」の2つについて、安全に避難できるのは「避難勧告」のときだという点です。「避難指示(緊急)」の場合は、もうすでに土砂災害が発生していても不思議ではない状態になっているため、特に土砂災害の場合、このタイミングから避難するため屋外に出たところで土砂災害に巻き込まれてしまうおそれもあります。土砂災害の危険がある地域にいる場合は、避難指示(緊急)が発令される前に避難を完了しておく意識を持っておくことが重要です。建物の外に出て避難するほうが危険と感じたときは、2階以上で斜面とは反対側の部屋へ緊急避難するなどの対応が必要です。
※8月21日に避難情報のあり方を検討する内閣府の作業部会で、レベル4に混在している「避難勧告」と「避難指示」を一本化し、よりわかりやすくする案がとりまとめられています。今後の動きにも注目が必要です。
土砂災害の前兆現象
土砂災害は突然発生し、予測がなかなか難しいとされています。自宅や職場が土砂災害危険区域に入っているなどの場合は、周囲の様子をよく観察しておくことも重要です。
豪雨や長雨が続き、次のような「予兆」を感じたら、すぐに危険なエリアから逃げてください。
・渓流の水がにごり、木が流れてきている
・土臭い匂いがする
・渓流の水位が急に下がる
・斜面から物音がする、地鳴りがする、揺れる
・水が染み出している
・木が傾いている
・地面に亀裂や段差ができている
ふだんから土砂災害の危険な場所を見直し、土砂災害に関するサイトを確認しておくことをおすすめします。
国土交通省 ハザードマップポータル
https://disaportal.gsi.go.jp/
気象庁 大雨警報(土砂災害)の危険度分布
https://www.jma.go.jp/jp/doshamesh/
防災ログ事務局:南部優子